2016年12月2日金曜日

【学問のミカタ】表現の自由~自分の表現がどのように伝わるか考えよう~

2016.11.24 大学風景

皆さんこんにちは。

前回のブログで、「学内の紅葉をアップしようかな」なんて書きましたが、先週はもう「雪」でしたね。大学内はこんな景色でした。↑↓

2016.11.24 朝10時ごろの大学

写りがよくなくてすみません




翌日はすっきり晴れたので、「空の色」と「雪の色」と「紅葉」がとてもきれいでしたね。
2016.11.25大学風景


更にこの日は、国分寺駅ビルがリニューアルオープンの日でした。
2016.11.25 10時からのオープンに向けテープカット
コンコースを降りたところまで並ぶ大行列でした。

北口も2018年開業に向けて再開発工事が進んでいますし、これからの国分寺には楽しみがたくさんありますね。




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さて、今日は【学問のミカタ】、テーマは「言葉」です。
現代法学部は中村悠人先生が「表現の自由」からアプローチしてくれました。

最近中村先生の授業を撮影していないので、下の先生の写真は2014年に担当した「裁判傍聴演習」です。先生から「実は痩せたんですよ~」とは聞いていましたが…本当に痩せられましたね。研究だけではなく沢山の委員会を担当され、更に学生一人ひとりに対する熱心な指導が印象的です。

ではどうぞ~。


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2014.7 裁判傍聴演習授業
現代法学ブログ
                                  中村悠人

全学部コラボ企画「学問のミカタ」、11月のテーマは「言葉」です。

法学をかじったことがある人はもちろん、かじったことのない人も、表現の自由という用語を聞いたことがあると思います。憲法第21条第1項で保障されている表現の自由とは、個人が外部に向かって、その思想、信条、主張、意思、感情などを表現する一切の自由を意味します。表現をする方法はいろいろありますが、言葉で伝えることが多く用いられています。

 この表現の自由は、民主主義社会の基礎となる重要な権利ですが、表現方法によっては表現を受け取る人を傷つけることもあります。侮蔑的な表現を用いて傷つけることもあれば、相手のプライバシーを暴くことで傷つけることもあります。そして、言葉等の表現によって相手を傷つけたとき、一定の場合にその行為が犯罪となることがあります。例えば、侮辱罪や名誉毀損罪がそれです。
 今回は、この犯罪について少し見ていきましょう。

 相手に対して侮蔑的な表現を用いる場合、ときとしてそれは侮辱罪という犯罪になることがあります。刑法第231条は、

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

と規定しています。侮辱とは、人格の尊厳に対する侮蔑的・軽蔑的表現を言います。口頭によるものだけでなく、インターネット上の掲示板などに書き込んだ場合も対象になります(後述の名誉毀損罪でもそうです)。そもそも、侮辱行為は、自分と相手が対等・平等な関係であり、相互に認め合っている関係であることを否定するものと言えます。この侮辱行為を、他人に対して公然と、つまり不特定または多数人が認識できる状態で行った場合には、侮辱罪となり得るのです。(なお、刑法第64条により、侮辱罪の共犯は処罰されません。)

 他方、刑法では名誉毀損罪という犯罪も規定されています。刑法第2301項は、

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

と規定しています。社会的評価を下落させるに足りる具体的な事実を、公然と示すことによって、他人の名誉を毀損した場合に成立する犯罪です。摘示される事実は真実のものでもよいとされます。そして、一般には、不特定または多数人に認識可能な状態になれば成立するとされ、現実に社会的評価が下落させられたことの証明は不要だとされています。

 名誉毀損罪にいう「人の名誉」や、侮辱罪の「人」に法人が含まれるとの理解が多いです。なお、自然人に限ったとしても、法人やその他の団体を名宛人とする名誉毀損行為や侮辱行為の場合、これらの団体の構成員の名誉を毀損するものと認められる場合は、これらの罪の成立を認めることはあり得ます。もっとも、関西人といった漠然とした集団は含まれないとされています。この点で、いわゆるヘイトスピーチにおいて、特定の個人ではなく、集団に対して名誉毀損行為や侮辱行為が行われた場合に、名誉毀損罪や侮辱罪が成立するかが問題とされています。

 さらに、公然とは、不特定または多数人が認識できる状態をいうと述べましたが、特定少数人に事実を摘示した場合でも、その中に新聞記者などがいてそれを新聞記事とすることで不特定または多数人に伝播していく可能性のあることを理由に、公然性を認めた裁判例があります。現代社会では、メディアの発達により情報の伝播がより容易となっていますから、例えば特定のLINEのグループやTwitterの鍵つきのアカウントで名誉毀損行為や侮辱行為が行われた場合にどうなるかも、考えていく必要があります。

2015.12.16 ゼミ研究報告会 中村ゼミ発表
 ところで、名誉毀損罪は、前述の通り、摘示される事実が真実でも成立し得ます。もっとも、例えば、ある公務員が賄賂を収受しているといったような事実のように、公共の利害に関する事実であれば、真実を明らかにすることが世論の形成と政治的意思決定のために必要となることもあります。そこで、刑法は第230条の21項は、

前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

としています。公共の利害に関する事実を、公益を図る目的で摘示した場合は、それが真実であるとの証明があれば、名誉毀損罪としては処罰されないとしているのです。この規定は、表現の自由の保障と個人の名誉ないしプライバシーの保護との調和を図ったものと解されています。
もっとも、「罰しない」の意味は、犯罪が成立していないから罰しないのか、それとも犯罪が成立しているけれども(政策的な理由で)罰しないのかについては争いがあります。(例えば、表現の自由の行使として、適法な行為である(違法性阻却)と考えれば、犯罪は成立していないから罰しないことになります。)

以上は、真実であるとの証明に成功した場合ですが、真実であることの証明に失敗してしまった場合や真実であると誤信していた場合はどうなるのでしょうか。
この点で、裁判所は、被告人が確実な資料・根拠に基づいて事実の真実性を信じている場合には、真実だと信じたことに相当の理由があるとして、たとえ真実性が証明できなくても名誉毀損罪の故意は否定されるべきだとしたものがあります(最大判昭和44625日刑集237975頁)。これに対して、確実な資料・根拠に基づいて真実であると信じた場合は、表現の自由の正当な行使であるから、刑法第230条の2(の違法性阻却事由)には該当しないとしても、刑法第35条によって適法となるという見解もあります。


 さて、簡単に、侮辱罪や名誉毀損罪を見てきました。刑法に少し興味が出てきましたか?売り言葉に買い言葉で、ついついひどい言葉遣いをしてしまうこともあります。自分の表現がどのように伝わるかを考えていきたいものです。自戒の念も込めて。


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中村先生ありがとうございました。

いかがでしたか。「自由」って言ってもそんなに何でもいいわけじゃないんだよ、ってところですかね。自戒の念も込めて言葉には責任を持たなければなりませんね。

ではまた次回!