2015年8月21日金曜日

【学問のミカタ】金崎先生から『宿題』が出されました!


みなさんこんにちは。

<夏休み>ですね~。大学内はとても静かです。

1~3年生の皆さんは夏休みを謳歌していることでしょう!
こんなに長いお休みがもらえるのは大学生ならでは!!です。大学に通わせてくれる親御さんに感謝し、楽しい夏休みを過ごしてくださいね。

4年生のみなさん、暑い中就職活動お疲れ様です。今年はシュウカツの時期が変わり、本当に大変そうだなぁと思います。夏バテしないように、頑張ってくださいね。

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さて、最近めっきり更新していなかったこの【現代法学ブログ】、しかし更新しない間もアクセス数は結構あり、申し訳なかったなぁなんて思っています。
オープンキャンパスに来る高校生の皆さんがアクセスしてくれているのですかね。ありがとうございます!!

現代法学部、楽しいですよ。

法律を知っていて損はなし!政治学も勉強できます!!
現代法学部で一緒に学びましょう☆

ちょっと宣伝してみました(笑)。
今週末にも<オープンキャンパス>があります、ぜひ現代法学部の学生さんや先生とお話してみてください。

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『オープンキャンパスに○校行くこと!』

が宿題になっている高校さんもあるみたいですね。今回の【学問のミカタ】のテーマは、まさに『宿題』。我が現代法学部は、金﨑 剛志先生が記事を書いてくださいました。

金崎先生は行政法の先生です。
今年度から始まった、<現代法学部公務員志望者支援プログラム>の担当者の一人として、皆さんを支援してくださいます。

読んでみると、ちょっと難しい・・・でも皆さんは夏休み中で時間がある~!!とのことで、最後の先生からの『宿題』もぜひ考えてみてください。ではどうぞ~

【 学問のミカタ:テーマ『宿題』】

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「宿題」
金崎剛志

(1)宿題の思い出
 夏休みの苦しい思い出として、宿題がトラウマになっている人は少なくないのではないだろうか。筆者自身も、小学校、中学校、高等学校のときは真面目に宿題をこなすタイプではなかったので、8月末にはいつも苦しんでいたことをよく覚えている。というのも、夏休みの宿題というのは、計算ドリルなど単純な問題をひたすら解くという行為が退屈でたまらなかったのである。
 思い返してみれば、義務教育の段階で、単純作業をひたすらこなすということにもし慣れていれば、他の職業を選んだのかもしれない。逆に言えば、単純作業に対する反発が、筆者を研究者という今の職業に導いたとも考えうる。そう考えると、夏休みの宿題を呪うどころか、感謝すべきではないかとすら思えるのである。

(2)法学的な論点
 宿題といえば、「ドラえもん」の中で、のび太君がいつも苦しんでいたことを思い出す。のび太君はいつも宿題忘れで廊下に立たされているという印象がある。ところで、敢えてマジレスするならば、現代においては、宿題忘れに対する制裁として廊下に立たせるという行為は、学校教育法で禁止された体罰との関係で論じられることがある(実際に議論しているのは、法律学の研究者ばかりではなく、小中高の学校教育にたずさわる先生や教育学の研究者もいると思われる)。ここで扱うのはその論点ではなくて、別の切り口から論じることとする。
 学校教育法11条は、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」と定める。法的には、懲戒は適法で、体罰は違法であるということになる。この規定を受けて、文部科学省では「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知)」を発している。この通知はインターネット上でアクセスすることができるので、参照されたい。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331907.htm

 この通知の中に、「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」というタイトルの別紙が添付されている。この別紙に、法律で禁止された体罰の具体例が記載されている。テレビ番組などで体罰に関する議論がなされているときは、この別紙に基づいていることが多いように思われる。そこで、「通知とはなんだろうか」という疑問を持つ読者もいるのではないか。

(3)行政立法とは何か
 ところで、学校教育には、上の紹介した通知の他に、学校教育法施行規則と学校教育法施行令がある(いずれも総務省の法令データ提供システムでアクセスすることができる)。そこで、通知、施行規則、施行令とは法的にどのように位置付けられるのか、という疑問が生じる。

 学校教育法は法律であり、法律は国会で制定されるものである。国会というのは、国民が選挙した議員から構成される。国会が法律を制定すると、法律が国民に対して拘束力を持つのは、法律が国民の選挙した国会議員から構成される国会で決めたルールだからである。他方、通知、施行規則、施行令というのは、国会が制定したものではない。

 一般に、施行令というのは内閣の発する命令(政令)で、施行規則というのは各省庁の発する命令(省令)である。通知というのは、ある行政組織内部において上級機関が下級機関に対して発する通達と呼ばれるものの一種である(この通達というものは、訓令、内規、要綱、通牒などの名前であることもある)。通達は、このようにある行政機関内部のルールだから、一般国民が通達に拘束されるということはない。したがって、一般国民が通達に違反したからといって制裁を与えられるなどということはない。上に紹介した通知も、この意味での通達である。これに対し、規則などといった名前がついたものの中には、一般国民を拘束するものがある

 施行令、施行規則、通達という形式を持つものは、行政機関が一般的なルールを定めるものであるので、「行政立法」と呼ばれる。行政立法の中にも、国民に対して拘束力を持つものと持たないものがある。なぜ行政立法というものがあるかといえば、法律の規定は抽象的であるため(そもそも抽象的でなければルールとして実効性を持たない)、具体の事案で適用するためには、法律の規定をより具体化して分かりやすくする必要がある。そこで、法律が、その詳細を内閣や各省庁といった行政の側で定めよという指示を行うことがある(これを委任」という)。この委任に基づいて、国民の権利義務の内容を行政が定める行政立法が、「法規命令」と呼ばれる。法規命令は法律に基づいて定められたルールなので、一般国民に対して拘束力を持つ。これに対し、委任に基づかないで行政が法律の詳細を定めるルールが、「行政規則」と呼ばれる。行政規則というものは、このように、国会が定めるものではなく、しかも法規命令とは異なって法律の委任に基づかないものだから、一般国民に対して拘束力を持たない。通達も、この意味での行政規則の中に分類されるものである。何らかのルールの名前として、同じ「規則」という名前がついているものでも、一般国民を拘束するものとそうでないものがあるのである。

 法律の委任というのは、例えば「その他厚生労働省令で定める事項」(薬事法426号)という定め方を法律がしている場合である。薬事法のこの委任を受けて、薬事法施行規則12項では、「法第4条第2項第6号の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする」として法律の細目を定める。これは、上に紹介した意味での典型的な法規命令といえる。したがって、国民に対して拘束力を有する。

(4)宿題

 では、上に紹介した学校教育法施行例、学校教育法施行規則、「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知)」、「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」などの文書はそれぞれ、法規命令か、それとも行政規則に当たるものなのか。この問題を宿題として読者諸氏に解いてもらいたい。

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金崎先生ありがとうございました。
答え合わせは次回ですかね。 ではまた!