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2018年7月9日月曜日

【学問のミカタ】裁判員って何をするの?

今回の【学問のミカタ】ブログは、現代法学部の高平奇恵からお届けします。

 「呼出状」は突然やってくる

 裁判員制度とは、国民が、裁判員として刑事裁判に参加し、被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決める制度です。
 裁判員の候補者は、選挙人名簿からくじで選ばれます。ですから、選挙権のある人には、ある日突然、裁判所から呼出状が来るかもしれません。
 呼び出された裁判員候補者は、裁判所で質問を受けるなどし(選任手続)、裁判員が決まります。
裁判員裁判は、殺人や傷害致死、強盗致傷などの重大な事件を対象としています。もしかしたら、この記事を読んでいる人の中には、そんな事件の裁判員をするのは怖いな、とか、本当に自分にできるのかな、と思う人もいるかもしれません。
でも、そんな風に思ってくれる人に、裁判員になってもらうことが、この制度の重要な意義のひとつだと考えています。なぜなら、人を裁くことへの恐れがなければ、適切な判断はできないからです。












私の弁護士バッジです。外側は金メッキなのですが、剥げて銀色になってきています。
新人だと思われないように、わざとメッキを剥がす人もいるんですよ。



裁判員制度の特徴

 裁判員制度が始まったのは、2009年です。実は、比較的新しい制度です。裁判員制度の特徴は、国民の中から選ばれた裁判員が、法律の専門家である裁判官と一緒に被告人が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのくらいの刑にするのかを決めることにあります。裁判官は法律の専門家ですが、裁判員と裁判官は判断者として対等の立場です。裁判員が裁判官と一緒に刑事裁判の手続に関与することは司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資する、というのが法律に書かれている裁判員制度の意義です。
 司法に対する国民の理解の増進や信頼の向上は、もちろんとても大切です。しかし、それにとどまらない重要な意味が、裁判員制度にはあると考えられます。
 それは、いろいろな意見が、裁判に反映されることです。様々な経験や知識を持った裁判員が意見交換をすれば、より慎重で、そして質の高い判断につながるのではないでしょうか。刑事裁判は、人が罪を犯したのかどうか、犯したとすればどのくらいの刑にするのかを決めるものです。裁判の結果は、その人の自由や、場合によっては生命を奪うという重大な結果をもたらすものです。裁判が間違うことができるだけ少なくなるよう、裁判員になった人には、この社会の一員として、ひとつひとつの事件に真剣に向き合い、議論することが求められているのです。
 










裁判員裁判の導入をきっかけに、法廷弁護技術の研究が進んでいます。





刑事裁判の原則

 皆さんは、事件で誰かが逮捕されたという報道に接したとき「犯人が捕まったんだな」と思ってしまっていませんか?逮捕された段階ではまだ「被疑者」疑いをかけられている人にすぎません。その人が、疑われている犯罪を実行したのかどうかは、裁判で認定されることになります。
 逮捕された時点で、その人を「犯人」だと思ってしまう、そう扱ってしまうことはとても危険です。捕まった人が犯人だという前提でいろいろな事実を見てしまうと、誤った判断につながる可能性が高まります。そして、本当は犯人でない人が有罪にされれば、その人の人生は大変な影響を受けます。死刑の場合には命が奪われてしまいます。また、真犯人が罪を免れることにもなります。冤罪は、とても深刻な結果をもたらすのです。
 このような冤罪の発生を防ぐために、刑事裁判には多くの重要な原則があります。ここで、ふたつほどご紹介します。まず、検察官が被告人の有罪を証明する責任を負うこと、すなわち、検察官が被告人が有罪であることを証明できない場合には、無罪の判断がなされるということです。そして、検察官は被告人が有罪であることについて「合理的な疑いを容れない程度の立証」をしなければなりません。裁判では、不確かなことで人を処罰することは許されませんから、証拠を検討した結果、常識に従って判断し、被告人が起訴状に書かれている罪を犯したことでは間違いないと考えられる場合に、有罪とすることになります。逆に、常識に従って判断し、有罪とすることについて疑問があるときは、無罪としなければならないのです。
 もし、皆さんに呼出状が来て、裁判員になる機会が訪れたら、是非裁判員になってみてください。そして、刑事裁判の原則を踏まえつつ、精いっぱい事件に向き合い、意見を交換し、結論を導いてほしいと思います。






【学問のミカタ】
東京経済大学では、各学部で高校生向けに分かり易く専門分野の教員がブログを公開しています。是非、お立ちよりください。

経済学部ブログ「復興支援の経済学

経営学部ブログ「Amazonが覆しつつある常識・・・
コミュニケーション学部ブログ「アスリートは勝負をどう学ぶのか
センター日記「ドイツの政治教育

2018年5月16日水曜日

【学問のミカタ】ろう文化を守ることとインクルージョン:障害者と差別について考える

2018「社会・法学入門概要」
できあがりました。お楽しみに。

 みなさんこんにちは。

 5月も半ばになり、大学もだいぶ落ち着いてきました。
 しかし[今週は寒い!][今週は暑い!!]とジェットコースターのようなお天気が続いていますね。体調を崩さないようにしてください。

 現法さんはやっと仕事が一段落しましたので、皆さんに提出してもらった[振り返りシート]を読んでいます。
振り返りシートは提出しましたか?未提出の皆さん、
ポストは出していませんが今も受け付けていますよ。

 [振り返りシート]には「こう書かなきゃいけない」というルールは定めていないので、提出されたシートは学生によってさまざまです。個性が出ていて、読みながら「こんな学生さんなのかな」と想像します。急いで書いた殴り書きの人もいますし、下書きをして清書する人もいます。どんな方法でも皆さんしっかり振り返っているなぁと思います。また、学生の皆さんの抱える問題や、学生支援に繋がるヒントもあり、皆さんが頑張って振り返っているのだから、読んで学生支援に繋がるよう勉強したいと思います。

少しご紹介します。

~1年2期の「振り返りシート」からランダムにピックアップ

“1年間の大学生活を終えて感じたことは時間が過ぎていくのが早いということである。入学したと思ったらもうすぐ2年生になってしまう。勉強量も高3の夏以降と比べたら少ない。そのため2年生になったら通学時間や隙間時間をうまく利用して勉強時間を増やしたいと考えている。春休みに3年から入るゼミを考えていた時、入りたいと思っていた先生が定年を迎えたことを知りとても悲しい。2年でさまざまな法律科目を学び興味のあるゼミが出てくることを願いたい。”
”将来についてまだ見えていない。夢を探しています。”
”1年間を終えて全体的には満足できるものであった。学業だけではなくサークル活動も楽しむことが出来たが他の活動をする余裕はなかった。2年次には将来について考え直し、今何をすべきなのかをもう一度考えたい。”
”1年間、右も左も分からず生活していくうちに、考え方が少し大人になったかなと思う。 以前は少しぶつけられたくらいでイライラしていたが、「そういう時もあるよな」と考えられるようになった。もう一つは、一年間一人暮らしをしてみて、生活の知恵のようなものが少しずつだが分かってきた。今までは親に頼りっぱなしで正直だらしのない生活をしてきたので、多少無理をしてでも東京に出てきて良かったと思う。2年次には自分も成人になるので、行動、発言には責任を持ちたい。簡単な目標として、フル単を目指して頑張っていきたい。”

 この「振り返りシート」には、「興味を持った科目」を3つまで記入する欄が設けられています。ここに一番挙がる科目は、「社会・法学入門」ではないかと思います。

 この科目はすごい科目です。現場に足を運び(見学)、社会問題・法律問題を実際に見聞する、当事者の方から話を聞くなどをして、自分で問題を発見し、実感し、解決策を考えていく。それが授業の目的です。ですから学生の皆さんも「よし、これから法や政策を学んでいこう」と強く思う科目なのだと思います。先生方も毎年この時期になると「今年はどうしようかな」とかなり考え、気合いが入っています。

 今年は19ゼミのうち見学があるのは15ゼミ、未定(学生の総意によるのかな)は2ゼミ、見学には行かず判例や事件事例を通して討論するゼミが2ゼミとなっています。

 1年生の皆さんには6月1日のリーガルリテラシー入門で「社会・法学入門概要」を配付しますのでお楽しみに。

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 さて、ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、今日は【学問のミカタ】。今回は中川 純先生が寄稿してくださいました。

 中川先生の「社会・法学入門」は、行政機関・委託機関・社会福祉法人・NPOなどの見学を考えているそうですよ。福祉法プログラムに興味のある人は是非チャレンジしてください!

 ではどうぞ~。

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「ろう文化を守ることとインクルージョン:障害者と差別について考える」
中川 純


 アメリカ合衆国の首都、ワシントンDCの中心部にギャローデット大学(Gallaudet University)という学校があります。ここは、「世界で一番静かな大学」といわれています。この大学は、ろう者や聴覚障害者など耳が聞こえない人たち(以下、ろう者)のための高等教育機関で、大学構内では、アメリカ手話だけがコミュニケーションの手段とされており、言語によるコミュニケーションがほとんどおこなわれていないからです。耳が聞こえる学生、教員、外国からの留学生はアメリカ手話を学ぶことが義務づけられています(現在も耳が聞こえる学生は、大学院とわずかな人数が学部で受け入れられているだけとなっています)。

大学キャンパスの外壁にある大学のサイン

 ギャローデット大学は、「ろう文化」の拠点となっています。同大学で言語学を研究としていたウィリアム・ストーキー教授(Professor William C. Stokoe, Jr.)は、手話が独立した構文と文法を持つ言語であることをあきらかにしました。手話が言語であり、他の言語に劣るものではないことは、ろう者に、聴覚でなく視覚、触覚を基礎とし、手話を重視する「ろう文化」を強く意識づけることになりました。この「ろう文化」をめぐって、2つの大きな出来事がありました。

1877年に完成したギャローデット大学のカレッジホール
(歴史的建造物)


 1つ目は、「ろう者の学長を、今!(Deaf President Now, DPN)」という学生運動です。ギャローデット大学は、1864年に創設されましたが、1980年代になるまで耳が聞こえる人が学長をつとめてきました。1988年に再度耳が聞こえる人が7代目の学長に就任したとき、学生がこれに反対しました。理由は、新学長が、ろう教育の経験が浅く、手話ができなかったこと、自分たちの学長がろう者のコミュニティのメンバーであるべきと考えたこと、からでした。この運動は、新聞・テレビなどで大きく取り上げられ、7代目学長は実質的に6日しかその座にいることができず、結果としてろう者が8代目学長(President Jordan)に就任しました。自分たちのリーダーを自分たちの手で勝ち取ったことはサクセスストーリーとして、この出来事を題材としたドラマがテレビ放映されました。

1870年に建てられた
ギャローデット大学のチャペルホール
(歴史的建造物)

 「ろう者の学長を、今!」の学生運動は、社会(マジョリティ(社会的強者))に対しろう者(マイノリティ(社会的弱者))の存在だけでなく、「ろう文化」を知らしめました。「ろう文化」を権利として印象づけ、差別的効果を緩和させ、社会への参加を促進するために、学校や職場に手話通訳者の費用を求めるような政治的な運動につながっていきました。現在、この運動は、ろう者に対する自己決定権やエンパワメントを象徴する出来事と理解されています。これまで一般社会の中でろう者が受けてきた過酷な経験からすれば、自分たちのアイデンティティを確立し、社会に受け入れられるきっかけとなった「ろう文化」を発展させることは、ろう者のコミュニティにおいて非常に重要なものであると考えることができます。

美しく、広いキャンパス

 2つ目は、「ギャローデット大学を1つに!(Unity for Gallaudet)」と呼ばれる反対運動です。これは、2006年に8代目学長が辞職するときに後継者として指名された女性教員の学長就任に対して、その他の教員、学生らが起こした反対運動です。その理由は、あきらかではありません(学生に対する彼女の態度がよくなかったともいわれています)が、有力な理由として、彼女は、ろう者であったものの、普通学校で教育を受け、23歳まで手話を習っていなかったことがあるといわれています。100名を超える逮捕者がでるほど大きな反対運動となったこともあり、大学の理事会は彼女の学長就任の決定を覆しました。その後、暫定的な学長を経て、生まれつき耳の聞こえない人が学長となりました。

地下鉄の駅の名前がギャローデット大。
レッドラインでユニオンステーションから1駅。

「ギャローデット大学を1つに!」の反対運動は、自分たちのリーダーを自分たちの手で勝ち取った点について、「ろう者の学長を、今!」の学生運動と違いがないようにみえます。しかし、その理由が、もし「ろう文化」に固執することにあったとすると、事情が少し異なります。差別に関して矛盾した状況を招くことになるからです。ろう者が絶対的多数を占める、ギャローデット大学という特殊なコミュニティにおいて、自らの「ろう文化(生まれながらにしてろう者であること、小さい頃から手話を使っていることなど)」を尊重することが、普通教育を受けてきたろう者を受け入れないという結果を導いたことになります。一般社会ではマイノリティであるはずのろう者が、このコミュニティではマジョリティになるにもかかわらず、「ろう文化(一般社会ではマイノリティである立場)」にこだわることが、コミュニティ内部で自分とは異なる文化を排除することになったといえます。ろう者のコミュニティは、一般社会に対し差別をなくすために多様性を引き受けること、つまり社会への「インクルージョン(包摂されること)」をもとめてきました。しかし、マジョリティとなったろう者たちは、マイノリティに対し自分たちが要求してきたように接することができませんでした。

アメリカ連邦政府議会議事堂

 自分たちのアイデンティティとして、また差別を排除する原動力となった「ろう文化」が、特殊なコミュニティ内のマイノリティを排除することにつながったといえます。ろう者のコミュニティ内の民主主義やそれに伴う利益の反映を考えれば、「ろう文化」を尊重することは正しいといえるかもしれません。しかし、マジョリティにとって都合のいいやり方や基準を押し付け、マイノリティの機会を失わせることは典型的な差別として認識されています。社会的特性を有する人々の間での権利・利益の衝突の問題は、ダイバーシティ(多様性の尊重)を求められる社会ではよくみられますし、今後ますます解決の必要性が増していくと考えられます。日本でも将来大きな問題になるかもしれません。困難な問題ですが、どうするのが正しかったのか、自由に考えてみてはいかがでしょうか?

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中川先生ありがとうございました。

うーん、なんと感想を述べてよいのか、どうするのが正しいと思うかは気軽には書けないですね。
みなさんは、これから専門家の中川先生のところで自由に考え、意見を述べ、勉強し、自分の答えを見つけてください。

ではまた次回!

2018年3月30日金曜日

【学問のミカタ】常識を超えるためのメソッド(その3・韓国の高齢者福祉制度は日本よりも遅れていますでしょうか?)

2018.3.30 学内風景
2年次も頑張りましょう!

みなさんこんにちは。

昨日とても暖かかったせいか、今日は桜の花びらが沢山舞っていましたね。
桜も終わり、いよいよ来週から2018年度始動です!

今日は【学問のミカタ】その3、韓国の高齢者福祉制度についてです。

その1では、西下先生の今までの研究について、その2では、福祉国家で有名なスウェーデンの福祉制度について寄稿していただきました。
そして今回は、お隣の韓国の福祉制度について教えていただきました。
ではどうぞ。

【前回のブログ記事へ】
 【学問のミカタ】常識を超えるためのメソッド(その1・プロローグ)
 【学問のミカタ】常識を超えるためのメソッド(その2・スウェーデンは高福祉高負担の国でしょうか?)

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常識を超えるためのメソッド
(その3・韓国の高齢者福祉制度は日本よりも遅れていますでしょうか?)

                                             現代法学部 西下彰俊



2)韓国の高齢者福祉制度は日本よりも遅れていますでしょうか?

確かに常識的には韓国は後発の福祉国家ですが、全ての高齢者介護政策が遅れているわけではありません。むしろ介護保険制度を韓国よりも8年近く早く2000年にスタートさせた日本が、逆に韓国から学ぶポイントが数多くあります。ここでも、韓国の高齢者福祉が日本よりも遅れているという常識を超えなければならないと思っています。


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後発のメリットという言葉がありますが、韓国の老人長期療養保険制度は日本の介護保険制度の光と影を学びながら、コンパクトに構築されました。ケアマネジャーという専門職を制度化しなったことが、そのコンパクトさの象徴です。韓国は、2016年に認知症高齢者に向けたサービスを制度化し始めています。すでに日本の介護保険制度に含まれている部分もありますが、日本の制度にはない独自の発想の部分もあります。

先に述べた要介護高齢者に対する虐待防止、人権保護という点では、韓国は優れたシステムを構築しています。ソウルに中央老人保護専門機関を置き、全国に29か所の地方老人保護専門機関を設置しており、在宅高齢者への虐待や介護施設における高齢者への虐待に関する通報を受け付け、虐待かどうかの調査を専門的に行っています。専門機関にはシェルターがあり、虐待被害者の一時的保護を行っています。また老人保護専門機関職員が、介護施設や病院を訪問し、虐待防止のための職員研修を行うなど極めて重要な役割を担う専門機関となっています。

残念ながら日本にはこうした老人保護専門機関は存在しません。日本においても高齢者虐待は増加しており、高齢者虐待防止機能、保護機能を持つこうした老人保護専門機関が必要です。高齢者だけにとどまらず、児童虐待の増加が極めて深刻であり、また障がい者への虐待も増えていることからすれば、一刻も早く「虐待防止総合センター」が設けられる必要があります。

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地域福祉の機関についても、日韓の両国で差が見られるます。韓国には、社会福祉館老人福祉館という地域福祉の中核機関があります。前者は貧困高齢者に昼食を無料で提供したり、少し見守りが必要な要支援の高齢者へのサービスを展開しており、後者は、卓球やビリヤードなどの屋内スポーツやダンス、合唱など社会参加を促すプログラムやパソコンや語学など生涯学習に役立つプログラムが用意されています。また韓国には、敬老堂という地域密着型の介護予防・社会参加システムがあります。こうした地域福祉機関は、介護保険前は多かったのですが、現在少数しか存在しません。社会福祉協議会という半官半民組織は、全国レベル、都道府県レベル、市町村レベルに重層的に存在し、地域福祉の中核を担っています。

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チャンウォンの病院のスヌーズレン
ところで、筆者の研究テーマの一つに、認知症ケアがあります。その認知症高齢者に対する非薬物療法として「スヌーズレン」(Snoezelenという感覚統合療法があり、スウェーデンや韓国ではよく見かけます。韓国では、老人療養院という介護施設や慢性期療養病院、保健所に設置されることが多いです。オランダが発祥の地で、スヌーズレンはもともと自閉症児、重度重複障害者を対象としてきましたが、認知症高齢者への効果が指摘される中で世界的な広がりを見せています。残念ながら日本ではほとんどスヌーズレンが話題にすらなりません。こうした点を確認しただけでも、韓国の高齢者福祉制度が遅れているという常識は間違っていることが分かります。こうした常識を超えなければなりません。




 以上、スウェーデンと韓国について常識を超えるメソッドの一端に触れてきました。我々にありがちなのですが、外国を過度に美化したり過度に貶価したりすることは厳に慎まなければなりません。一つ一つの国が持つ光と影を、予断を排除して、冷静に客観的に、実証的にありのままに、理解すること、この一語に尽きます(もっとも語が1つどころか多数ありますが)。これが国際比較研究する上で最も重要な態度だと思っています。

私たちの常識的思考のうちでもっとも危険な発想は、「世界中のどこかにフルスペックのユートピアがあるはずだ」という思い込みです。ベストの国はないのです。ベターな国があるだけです。これからも、こうした立ち位置から国際比較研究をしてきたいと思います。

最後の最後になりますが、私達は、スウェーデンは医療費も無料で素晴らしい国だという常識を持っています。確かに少額の自己負担であることは素晴らしいのですが、それ以外の点で実は、常識を超える作業が必要なようです。2018年度に寄稿の要請があれば、この点についても紹介してみたいと思います。

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西下先生ありがとうございました!

いかがでしたか?

昨日一昨日と、スウェーデンに出張中の西下先生から、スウェーデンの最新情報が届きましたので併せてお読みください↓

私の方はまた次回!

2018年3月23日金曜日

【学問のミカタ】常識を超えるためのメソッド(その2・スウェーデンは高福祉高負担の国でしょうか?)

2018.3.23 現代法学部学位記授与式

みなさんこんにちは。

一昨日の雪はびっくりしましたね。まだその影響が続いているのか、今日の天気はうす曇りでした。
桜もこんな感じ・・・
一番咲いている守衛所の横だと、「あ、沢山咲いているな」と思うのですが、真ん中あたりまで歩くと・・・

まだまだですね。

しかし、天気はさておき、桜はこの3年間の卒業式では一番咲いていたようです。
2015卒業式当日
2016卒業式当日

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
今日の「現代法学部学位記授与式」の写真は、別のブログにあげますね。

追記:あげました。
【ブログ記事へ】卒業式写真館2018

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さて、今日は【学問のミカタ】その2です。

前回のその1では、西下 彰俊先生の今までの研究について寄稿していただきました。今回は、それを掘り下げて、西下先生が20年間研究を続けている「スウェーデンの福祉政策」についてお話いただきます。

ではどうぞ~!

【前回のブログ記事へ】
 【学問のミカタ】常識を超えるためのメソッド(その1・プロローグ)

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常識を超えるためのメソッド
(その2・スウェーデンは高福祉高負担の国でしょうか?

                                             現代法学部 西下彰俊


(1)スウェーデンは高福祉高負担の国でしょうか?

まず、高負担かどうかについての常識的判断では、スウェーデンは高負担の国ということになります。しかし実証的にスウェーデンを研究してきた人間からすれば、迂闊にイエスとは言えないのです。


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実は、スウェーデンにおいて個人の税負担は決して高くありません。消費税が25%と高率なのですが、食品は12%と軽減税率が設定されておりますし、新聞雑誌・コンサート・スタジアムなどの文化的活動は6%のみです。国に納める所得税は、労働者のなんと約80%がゼロなのです。2018年は年収約592万円以上の場合のみ20%の所得税を納めることになりますし、さらに年収が多い861万円以上の方は25%の所得税を支払うことになります。逆に地方自治体に納める住民税はかなりの高率になっています。住んでいる基礎自治体により若干の格差がありますが(税率の決定権が地方自治体にあるからです)、市民税と県民税の合計が約31%です。


他方日本は、国に支払う所得税の累進性が高く所得水準により5%から45%までの7段階で税金を納めるシステムです。地方自治体に支払う住民税は、一律10%です。内訳は、道府県民税が4%、市町村民税が6%です。こうしてみると、スウェーデンが高負担の国で、日本は低負担の国であると、決して安易に決め付けてはいけないことが分かります。常識を超えることが必要不可欠ですね。

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次に、高福祉に対する評価に移ります。常識的判断では、スウェーデンは高福祉の国ということになっていますね。社会サービス(社会福祉とは言いません)は、高齢者ケアだけではなく、障がい児者ケア、保育など範囲が広いです。私の専門である高齢者介護に限定して言えば、迂闊に高福祉とは言えない状況にあります。

急に専門的な話になって恐縮ですが、スウェーデンの社会サービスは行政処分としての措置制度に基づいており、高齢者ケアサービスを利用する時には、コミューン(市)に申込をして、職員である援助判定員による措置判断が必要となります。援助そのものが必要であるか、必要である場合その頻度をどうするかは、援助判定員がサービスの利用申請をした高齢者の自宅を訪問して判定します。

スウェーデンでは、高齢者ケアに関して「順序モデル」(筆者の造語です)が原則になっていると言って良いでしょう。同モデルの含意は、要介護高齢者は死に至る終末期(ターミナル)の段階までは在宅サービスを利用し、最重度の要介護状態になった段階で、援助判定員の判定により介護の付いた特別住宅という介護施設(日本の認知症グループホームの原型)に入居することができること、つまり在宅から施設へという順序が確定していることを示しています。

介護の付いた特別住宅のエントランス。全て個室です。 


 では何故、順序モデルの原則が存在するのでしょうか。表向きの理由は世界的な潮流であるAging in Place(生まれた場所で老後を過ごすという意味)を高齢者自身が望んでいるからということですが、高齢者ケアの責任主体であるコミューン側の本当の理由は、在宅介護を強化すれば、財政のコストカットができるからです。スウェーデンの2009年頃の資料によれば、介護施設のコストは在宅サービスの5倍ほどかかるとされていました(その後、この種のデータが公表されていないので、現在のコストの比較は困難です)。

基礎自治体であるコミューンは、様々な行政サービスを実施しなければならない中で、高齢者が介護施設に入居するのを可能な限り抑制することで、コストの節約をはかってきました。こうした抑制が全国に290箇所存在するコミューンで常に行われているために、スウェーデン全体の介護施設の入居者のための部屋数が徐々に減ってきています。スウェーデンは日本、韓国、台湾と違って急激な高齢化は予測されていないものの、緩やかな高齢化は今後とも続くわけですので、認知症高齢者や80歳以上の高齢者は当然増加していきます。要介護高齢者が増えるにもかかわらず、結果的に国全体で施設ケアが縮小しているというあり得ない現象が現実に生じています。


こうした抑制傾向は私だけが論文で指摘しているわけではなく、ストックホルムにあるAging Research Center(ストックホルム大学、カロリンスカ研究所との連携組織)のある研究員も同様の指摘をしています。二人で話し合っているのですが、今後の課題は、スウェーデンの高齢者ケアの問題点をただ指摘するだけではなく、全国的な抑制傾向をストップさせる「実現可能な政策をできる限り早く具体的に提言する」ことです。

ところで、2002年までは、コミューンが決めた在宅サービス利用時の料金表の金額に制限がなかったため、かなり高額の利用料を徴収するコミューンが存在しました。筆者が10のコミューンをランダムに選び、標準的な年金収入と在宅サービスの利用頻度を設定して2000年にシミュレーションした結果、約6倍の格差が見られました。当然ですがこうした弊害をスウェーデン政府も気づくところとなり、2002年に毎月の自己負担額の上限額を全国一律1,516クローナ(約19,700円)と定めようやく格差はほぼ解消されました。なお2018年のそれは、1,820クローナ(約23,700円)となっています。


昨年末開催の
<認知症と高齢者虐待に関する国際シンポジウム>



これら以外にも、スウェーデンの高齢者ケアシステムには、様々な問題点があります。詳しくは筆者が書いた『スウェーデンの高齢者ケア』(2007年、新評論)、『揺れるスウェーデン』(2012年、新評論)をご覧いただければ幸いです。以上述べてきた論点を少し確認しただけでも、スウェーデンが高福祉国家であるとは断定できない現実の姿を垣間見ることができました。

 実は、1998年にスウェーデンのリンショーピング大学テマ研究所の客員研究員として1年間留学するまで、筆者自身常識に囚われて、スウェーデンは理想的な高齢者福祉国家だと思っていました。しかし1年間スウェーデン各地のコミューンや大学や研究所でインタビューをする中で、また各地の高齢者介護施設を取材する中で、スウェーデンは高福祉の国であるという一般の常識に囚われてはいけないと痛切に感じました。確かに、スウェーデンという国は素晴らしい国の一つであり相対的には老後に安心して住むことができる心地の良い国です。しかしこのこととは別に、研究者としてスウェーデンの高齢者ケアシステムを「ありのまま」に、エビデンスを実証的に示しながら明らかにする責務があると感じています。

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 もちろんスウェーデンには、日本の介護保険には存在しない優れたシステムやサービスがあります。私はスウェーデン批判論者ではないので、上記の単著には、スウェーデンの高齢者ケアの素晴らしいシステムやサービスを論じており、そうしたスウェーデンという国の高齢者介護政策の「光と影」を客観的に理解することが肝要だと思っています。

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西下先生ありがとうございました!

いかがでしたか?スウェーデンの福祉に関して、自分が既に持っていた情報とちょっと違ったのでは??今まで思っていたことが覆ったのではないでしょうか?

さて次回は完結編、「常識を超えるためのメソッド(その3・韓国の高齢者福祉制度は日本よりも遅れていますでしょうか?)」です。お楽しみに!

ではまた次回~

2018年3月16日金曜日

【学問のミカタ】常識を超えるためのメソッド(その1・プロローグ)

2018.3.15 法学検定表彰式@法曹会館

皆さんこんにちは。

寒い寒いと思っていたのに、あっという間に暖かくなり、西日本では桜が開花しましたね。大学の桜はまだ咲いていませんが、きっと来週の「卒業式」には綺麗な光景が見られることでしょう。

【外部ホームページへ】一番乗り!高知の桜が開花

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昨日、村本 武志先生と現法さんは、霞ヶ関にある「法曹会館」というところに行ってきました。

【外部ホームページへ】一般財団法人「法曹会|法曹会館」

理由はというと、



今年の法学検定試験で、1年生の合格者が多かったため表彰されたからです。
表彰式(村本先生が表彰式に参加しました)

去年の1年生よりも2,30人多かったかな?皆さんよく頑張りました。
合格した学生の皆さん、おめでとうございます。2018年度は「法学検定スタンダード」試験に合格するよう勉強を続けてください。


「法曹会館」って初めて入りましたが、結婚式も出来るんですね。

「あれ、現法さん初めて入ったの?」と村本先生に言われ、「じゃあ案内してあげるよ」と、授賞式終了後に、村本先生が案内してくれました。
1階 法律書出版

その後「ついでに霞ヶ関も案内しましょう」と、法務省、東京高裁、弁護士会館などを案内してくれました。
弁護士会館
「おー久しぶり!」と知り合いの弁護士さん
に偶然会い談笑していました。

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さて、今日は【学問のミカタ】。

今回は西下 彰俊先生が寄稿してくださいました。

「長いので3本立てにしてね」とのことでしたので、今回は「その1・プロローグ」として、先生の研究分野、これまでの研究についてを掲載します。
ではどうぞ。

【過去のブログ記事へ】高齢期の福祉向上を目指して~西下彰俊先生にインタビュー~第1回
【過去のブログ記事へ】高齢期の福祉向上を目指して~西下彰俊先生にインタビュー~第2回
【過去のブログ記事へ】私たちのゼミ合宿を紹介します!~西下ゼミin仙台 2泊3日~
【過去のブログ記事へ】~海と兵士~ボランティア活動を通じて知る『絆』
【過去のブログ記事へ】毎年学園祭に参加するゼミ・・・その名も西下ゼミ!


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今年の西下ゼミ生のみなさんと西下先生
(ゼミ研究報告会懇親会にて)

常識を超えるためのメソッド
(その1・プロローグ)

西下 彰俊


 私の研究テーマは、高齢者介護政策の比較研究です。

 20年ほどスウェーデンの介護政策を研究してきましたが、現在は、韓国、台湾など東アジアにも関心を広げ、特にここ数年は、介護政策だけでなく、高齢者虐待と認知症ケアに焦点を当てて比較研究をしています。

 また、孤立死問題にも強い関心を持っています。研究のトピックスは多義にわたっており、外国人介護労働者の労働環境にも注目し全国調査も行いました。このようにトピックスは拡散するばかりですが、共通する軸は、虐待の被害にあう高齢者、認知症高齢者、外国人介護労働者、孤立した高齢者の「人権」をいかにして守るかという視点です。


 私は、社会学の視点に立ちながら実証的な方法論を用いて介護政策の比較研究を行っています。
 よく言われることですが、社会学という学問の特徴は、「常識」を括弧に入れることです。常識を括弧に入れるとは、具体的にどうすることなのでしょうか?



----☆


 結論を先に申し上げるならば、自分が既に持っているものの見方・考え方や知識を疑うことに他なりません。このメソッドを駆使し常識を超えることを意識しながら、介護政策比較研究の新たな世界に辿り着こうと日々奮闘しています。


西下ゼミ
短期研修ゼミ合宿(韓国)
これは授業でもよく言っていることですが、私の授業内容を鵜呑みにしてはいけないですと。

常識を括弧で括ることの必要性を説いている私が、意図せず無意識のうちに根拠のない常識を前提にした判断をしているかもしれないからです。誰しもそうですが、専門外のことに関しては、括弧で括ることができていないことが少なからずあります。






 以下では、若干の重要なトピックスについて常識を超えることでどのような世界の一端が垣間見えるか、具体的に明らかにしてみましょう。

              <続く>


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西下先生ありがとうございました。

さて、次回の西下先生ブログは「常識を超えるためのメソッド(その2・スウェーデンは高福祉高負担の国でしょうか?)」です。お楽しみに!


2018年1月31日水曜日

【学問のミカタ】「犯罪」のイメージ ~平成29年度版犯罪白書より~

2018.1.22 大雪の日

みなさんこんにちは。

第2期の定期試験も無事に終わり、いよいよ春休みですね。
あっ…無事に…ではなかったか。

【外部ホームページへ】1月22日の関東の雪「典型的な南岸低気圧」低気圧の急発達と下層の冷気で大雪に(ウェザーニュース)

1月22日(月)のお昼頃から雪が降り始め、帰る頃には吹雪いていました。翌23日の定期試験初日は、交通機関への影響を考慮して試験開始を1時限分遅らせることになりました。


しかし学生の皆さんは元気で…


自分と同じ大きさの雪だるま作成中。いつから作っているのか聞いたところ「まだ30分位ですよ」とのこと。こんなに大きな雪だるまが作れるほどの雪は、東京ではそう降らないですもんね。帰る学生も皆で雪を投げあいながら帰っていました。



予報によるとまた今週も雪のマークが。恐いですね。皆さん気をつけましょう。
【外部ホームページへ】週後半の雪予想 降雪あり・なしで見解分かれる(ウェザーニュース)

東京の低温も珍しいですが、今日は更に珍しい天体ショーもあるようですね。
【外部ホームページへ】今夜は皆既月食 ハワイからの中継も(ウェザーニュース)


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さて、今日は【学問のミカタ】。中村 悠人先生(刑法)が寄稿してくれました。

日々の事件・事故はニュースで知りますが、刑務所に入って服役している人がどのくらいいるのか、どんな罪が多いのか、なんて考えたこともありませんでした。今回中村先生はそのデータを示し説明してくださいました。

ではどうぞ~。


【学問のミカタ1月】


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2017.12.20ゼミ研究報告会で質問する中村先生


「犯罪者」と聞くとどのようなイメージをもつだろうか。

凶悪な人間、歪んだ性格の人、常に人を陥れたり傷つけたりする人、そういうイメージであろうか。このブログを読んでいる方のなかには、「私は犯罪者になんかあったことないけど、きっと怖い人なんだろう。」と思った人もいるかもしれない。しかし、ちょっと考えてみると、このようなイメージは揺らいでくる。「犯罪者」というからには犯罪をした人だが、犯罪といえど多様なものがある。前述のイメージに合いそうなものでは、殺人罪や強盗罪、放火罪、強制性交等罪、あるいは詐欺罪等々であろうか。

もっとも、殺人といえども無差別や快楽での殺人もあれば、DVや虐待の末に耐えかねての殺人も、介護疲れによる殺人もあるだろう。詐欺といっても、振り込め詐欺の計画立案をして行ったものもいれば、割のいいアルバイト感覚で受け子(現金等の財物を受け取る役。学生がこの受け子をやる例も。)をする人もいるだろう。さらに、犯罪には、運転免許証を携帯しないで運転する罪や最高速度をこえる速度で車両を運転する罪、自動車等を運転中に携帯電話等で通話をする罪などもある。また、公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した罪や虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た罪のようなものもある。このような犯罪を行った人は、冒頭のイメージに合うだろうか。


ここで、刑務所にいく「犯罪者」は先のイメージ通りだろう、と考える人がいるかもしれない。実際に刑務所に収容される人(受刑者)は、どんな人であろうか。『平成29年版 犯罪白書』によると、平成28年末で受刑者は49,697人で、平成28年の入所受刑者は20,467人で戦後最少となっている。この入所受刑者のうち男女比は、男性18,462人、女性2,005人である。年齢層別構成比で見ると、


20歳未満
20~29
30~39
40~49
5064
65歳以上
男性
0.2%
14.3%
23.2%
27.1%
23.7%
11.6%
女性
0.1%
10.0%
21.2%
29.8%
20.8%
18.1%

となっている。

もう少し掘り下げてみよう。まず、年齢層に関しては、65歳以上の入所受刑者数が増えている。単純に10年前と20年前で比較してみると、受刑者の高齢化が見えてくる。

男性60~69
6569歳)
男性70歳以上
女性6069
65~69歳)
女性70歳以上
平成8
1165
333人)
150
62
22人)
12
平成18
2710
998人)
707
211
88人)
89
平成28
2307
1164人)
971
246
137人)
226

高齢の受刑者のなかには認知症が疑われる者もいて、来年度から8つの刑務所で受刑者に認知症検査を行う方針を法務省が発表している。高齢の受刑者には、介護が必要な者も多く、刑事施設で所定の作業を行わせるという内容の懲役刑を行うことが難しい状況の受刑者もいる。刑務所であれば衣食住が保障され、医療も受けられるとして、彼・彼女らにとっては刑務所が生きていくためのセーフティネットとして機能している側面もある。

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 次に、罪名別でみてみよう。一番割合が高いのが窃盗罪(男性32.1%/女性45.4%)で、次に覚せい剤取締法違反の各種犯罪(男性26.2%/女性36.8%)、そして詐欺罪(男性10.2%/女性5.0%)、道路交通法違反の罪(男性4.9%/女性2.0%)と続いている。



窃盗
覚せい剤取締法
詐欺
道交法
全体
6837
33.4%
5580
27.3%
1980
9.7%
950
4.6%
男性
5926
32.1%
4842
26.2%
1880
10.2%
909
4.9%
女性
911
45.4%
738
36.8%
100
5.0%
41
2.0%

窃盗罪と覚せい剤取締法違反の各種犯罪で、半数以上が占められている(女性については8割を超える。)。その一方で、殺人や強盗、強制性交等(強姦)、放火については(それぞれ未遂等含む)、割合としては高くない。



殺人
強盗
強姦(強制性交等)
放火
全体
218
1.1%
414
2.0%
260
1.4%
154
0.8%
男性
180
1.0%)
406
2.2%
260
1.4%
134
0.7%
女性
38
1.9%
8
0.4%
20
1.0%

このように見てくると、皆さんのなかでも、冒頭のような「犯罪者」のイメージから少し変わってきたかもしれない。少なくとも、自分のイメージだけで考えては、見当違いなことになりかねないと思ってもらえたら幸いである。

今回は、ごく一部(のさわり)だけを扱った(詳しくは講義でも扱っていく)。興味を持った方は、一緒に学んでいきましょう。

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中村先生ありがとうございました。
いかがでしたか?
 興味を持った学生のみなさんは、来年度は中村先生の「刑法a/b」を履修してくださいね。ちなみに火曜2限です。

ではまた次回!