2014年7月17日木曜日

「高齢期の福祉向上をめざして」第2回
~福祉、西下彰俊先生にインタビュー~

西下 彰俊先生
<スウェーデン、エステルシュンドコミューンでの調査>

皆さんこんにちは。毎日暑いですね。

今週で、水・木・土曜の授業が終了します。来週月・火曜の授業が終了すると、723日からいよいよ定期試験が始まります。

以前のブログで取り上げましたが、来週の721日(月・祝日)は祝日授業日ですので忘れないようにしてくださいね。
 

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これも以前のブログで取り上げましたが、夏休み中に震災ボランティア2回開催されます。

【過去のブログへ】今年もやってます!「模擬法廷」で裁判を体験~授業「裁判傍聴演習」~
 
2014.5 第1回ボランティア
木本ゼミの大出君
昨日から申込が始まりましたが、既に両日とも満員になりました。20名ほどお断りをしている状況です。「僕応募しましたよ」なんて昨日声をかけられました。みんなで頑張りましょうね。

宿泊する「二又復興交流センター」
旧小学校の建物に泊まります。
現代法学部の学生さんからも15名の申し込みがありました。ここでちょっと注意を。第2回目のボランティアの時なのですが、現代法学部生のキャンセルが目立ちました。「何か現代法学部で急なイベントがあるのか」と問い合わせがありました。行かれない学生もいるのですから、今後はこのようなことがないようにしてくださいね。



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さて、今日は、予告通り西下彰俊先生のご登場です。

 西下 彰俊先生の本 

前回は、西下先生の専門である「福祉」について、「福祉大国」といわれているスウェーデンと、日本のお隣、韓国の事情をそれぞれ伺いました。今日は、その続きから、「福祉と法」についてお話しいただけることになっていますので、インタビューしてきました。
前回の記事はこちら↓
ではどうぞ。
 
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現法さん:ご無沙汰しています。

西下:はい、ご無沙汰しています。自分のブログにも書きましたが、41名の受講生(1年生から3年生まで)の履歴書を添削していたので、遅くなりました。その上持病が悪化して、<頸椎性神経根症>にかかり、右肩から右腕にかけて痺れていまして、病院通いの状態です。

現法さん:体調のお悪い中すみません。前回は前置きが長過ぎましたので、早速本論をお願いして宜しいでしょか。

西下:あのー、本論に入る前に、<スウェーデンと日本の税負担>ということで少しお話させていただきたいのですが。

現法さん:そうですか、お願いします。

西下:実は、小生、国民負担率という指標に問題があると思っていて、この指標の内容がおかしいと思っています。この国民負担率は、租税負担と社会保障負担を合計したものを国民所得で割るという指標です。租税負担には、国税や地方税に加えて法人税や間接税としての消費税もこの指標に入っています、社会保障負担には、年金保険や医療保険に加えて社会保険の事業主負担が入ります。

現法さん:具体的には、国民負担率の何が問題なのでしょうか。

西下:この話は、福祉論の授業でも最初に話題にするのですが、福祉の個々のサービスの話ではないので、皆さんキョトンとしています。国民負担率の何が問題かと言えば、個人ベースの税金額も企業という組織ベースの税金も一緒くたに合計されて計算される点です。

直間比率という言葉がありますが、これをもじって言えば、<個人税・法人税比率>が全く考慮されていないことです。この指標は国際比較に使われるのですが、この個人税・法人税比率という重要な情報が捨象され、総額を比較しても、その比較からは何も生まれないということです。よく言われる議論としては、国の借金を全く考慮していない点も批判がありますが、このことを含めて、国民負担率という指標には問題点が多過ぎることが指摘できます。

    私としては、個人税・法人税比率こそ、それぞれの社会の特徴を表す最も重要な指標であり、この比率を捨象している国民負担率は、指標としての有効性をもともと持っていないと考えています。

     
現法さん:だんだん、難しい議論になってきましたね。

西下:そうですね。では、もう少し分かりやすい別の議論として<高福祉・高負担>について、スウェーデンと日本を比較しながら考えてみたいと思います。言い換えれば、スウェーデンは果たして高負担の国なのかを考えてみたいと思います。

個人の税負担で言えば、スウェーデンにも日本にも国に支払う所得税があります。日本は、所得の多寡によって課税率が分かれており、5%、10%、20%、23%、33%、40%と6段階あります。年収195万円以下の低所得層も、5%の所得税を国に納めているわけですね。

西下:ところが、驚くことに、スウェーデンでは、所得のある人の、実に85%が国には所得税を納めておりません。ロハです。ロバではありません。。。

現法さん:では、残りの15%はどういう方ですか。

西下:はい、これも授業で教えていますが、高額所得者ので、年収ベースで大体650万円を超えると(本当はスウェーデンクローナで表記すべきですが、分かりやすく日本円に換算しました)、超えた分に20%が課税され、年収900万を超えると超えた分にさらに5%課税されます。ほんの一部の15%の高額所得者だけが、国に20%ないし25%の所得税を納めるだけなのです。

現法さん:へー、驚きました。

西下:国に支払う所得税だけ見ると、スウェーデンの方が極めて低負担です。スウェーデンを含め北欧は高負担だと、<刷り込まれている>ため、誤解が生じています。国民負担率というものさしの危うさ、スウェーデンが高負担の国であるというイメージの危うさを指摘してきました。

以上、2つの事柄について、「今ある概念やイメージを疑う」ことの大切さを強調してきました。今ある常識を疑い社会を観るのが社会学の特徴ですが、これは、社会学の立場から、高齢者ケアを分析する際の私の立場でもあります。 

現法さん:へー、社会学はそういう特徴があるのですね。

西下:ここで、直ちに付け加えなければならないことがあります。スウェーデンでも日本でも地方自治体に治める税金があります。これは、スウェーデンの方が高負担でして全国平均で32(基礎自治体として比率に差があり)です。日本は、全国一律10です。スウェーデンは日本の3倍以上です。2種類の税金を比較しただけで、スウェーデンと日本は、こんなに違うんですね。消費税については、スウェーデンが25(ただしデンマークと異なり、軽減税率あり)、日本は8と大きな開きがあります。
   時間があったら調べてみたいと思っているのですが(時間がないので多分調べないのですが)、家計分析が必要ですね。スウェーデンと日本の標準的な世帯を数ケース選び、国に支払う所得税負担額、地方自治体に支払う所得税額、消費税負担額、社会保険料負担額などを具体的に家計レベルで比較すると、面白い研究になると思います。 
    あ、もう授業の時間が迫ってきましたので、もうこれで。続きというか本論の話は、次回に延期ということで。また、来てください。

現法さん:は、はい。<あれ???また本題に行かないの???>
 
 
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西下 彰俊先生ありがとうございました。体調お大事にしてください!
 
みなさんいかがでしたか?
西下先生は「社会調査」もご専門です。先生は忙しくて手が回らないようですので、是非誰か西下ゼミで「スウェーデンと日本の家計分析」研究をしてみてはいかがでしょうか。

いつも面白い話題を提供している西下彰俊先生のブログ大学教授キョトンCのスウェーデン・ラーゴム便り!!も是非読んでみてください、西下先生の人柄がよくわかります。

何と今回は「集団的自衛権」について西下先生がキョトンと怒っている記事を書いています。さすが現法の先生!
【西下先生ブログへ】危険切迫だけで、集団的自衛権行使可能???

 
しかし、また今回も「本題」には入れませんでした。来月のお楽しみですね!
 
ではまた次回!