2017年2月10日金曜日

【学問のミカタ】法も「ルール」
~そんな「法」の学び方をお教えしましょう~

2016.12.7 ゼミ研究報告会打ち合わせ
(桜井 健夫教務主任挨拶)

みなさんこんにちは。

今日は入試3日目です。今日が一番受験生が多い日だそうです。
現法さんのいる部屋も《総動員》で監督に行ってます。(現法さんはお留守番係)
いいお天気でよかった、受験生の皆さん、頑張ってくださいね。

さてさて、今日は【学問のミカタ】テーマは【ルール】。
現代法学部は桜井 健夫先生が記事を寄せてくださいました。

【ルール】 なるほど、法も立派なルールですね。

桜井先生から「文章は長いですがそのまま載せてください」と書き込みがあり、読んでみたところ確かに少しナガーイ!

シカーシ!
「どこの学部を受けようか」悩んでいる高校生の皆さんには「法」の選択肢を考えられる良い記事です。(もう少し早く書いてくれればよかったのに)

また、既に現法で学んでいる学生の皆さんも、改めて読んでみると、「来年どの授業を受けようかな」の参考になると思いますよ。

それでも長い文章か~どうしようかな・・・の皆さんに更におすすめ!

桜井先生によると、こんな人はこれを勉強してみたら?とのことです。

国家や政治、哲学に関心がある人⇒ 政治をにらむ・憲法
論理が好きな人⇒ 条文から始まる・刑法
バランスのとれた判断力を磨きたい人⇒ 結論から始まる・民法
ビジネスの実務に興味のある人や立法論に関心がある人⇒ 法は後からついてくる・商法
キャリアの授業で、よく「こんな人にはこんな職種がおすすめ」なんてありますが、法について桜井目線でおすすめを考えてくれました。はい、あとは読んでみてくださいね。

ではではどうぞ~。

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2016.12.17ゼミ研究報告会(桜井ゼミ①・②)

現法ブログ2017年2月 「ルール」
                               桜 井 健 夫

法の学び方
2017年1月、米国において、AI(人工知能)がトランプゲーム(ポーカー)でプロと対決して圧勝したという報道がありました。AIはゲームのルールを学び、その上で確率と読み合いの勝負をしたわけです。他方、同じ米国のトランプでも大統領の方は、入国に関するルールにこだわった司法長官代行を解任したと報道されています。



 このようにルールには、ゲームのルールから法までいろいろあります。現代法学部ではこのうち法を学びます。一口に法と言っても、憲法、法律、政令、省令、条例など様々なものがあります。これらは、実際に制定手続きを経て文字で表されているので、実定法と呼ばれます。それを集めて本にしたものが、六法全書やさまざまな法令集です(これに対し、文章化されていない慣習法というものもあります)。


 法はそれだけでは使えません。法の内容を確定して具体的な事実に当てはめる作業が必要です。これを解釈といいます。現代法学部では、法の解釈を学ぶことができます。解釈の仕方には、実は法によって相当違った特徴があります。法の解釈を学ぶには、その法における解釈の特徴を知っておくことが大切です。このブログでは、憲法、刑法、民法、商法における解釈の違いに焦点を当てます。今これらの法を学んでいる人は、この違いを意識して役立てて下さい。これからどれを中心に学ぶか選択する人にも参考になると思います。

政治をにらむ・憲法
憲法は、国家を縛る規範であるため、解釈も政治の影響や圧力を受けやすい面があります。9条(戦争の放棄と戦力の否認)、2条(皇位の継承)などが最近話題となりました。政府が解釈を変更すると、それ自体がニュースとなります。変更後の政府解釈が正しいかは、最終的には裁判所が判断する立場にあります。政府の影響からどこまで自由に判断できるかが問われます。ただし裁判所は、そもそも訴訟が提起されないと判断できないという受け身の立場です。
憲法の解釈を学ぶことは、国家や政治を学ぶことにつながります。人権規定の解釈では、人にとって何が大切かを考える哲学的な思考も関係があります。国家や政治、哲学に関心がある人は、興味をもって学ぶことができると思います。

条文から始まる・刑法
 刑法は、罪の具体的内容とそれを犯した場合の処罰内容を定める法律です。盗んだら懲役何年、わざとケガさせたら懲役何年、罰金いくらなどと範囲をもって決めています。市民は、法律で犯罪として書かれている行為をしなければ処罰されることはありません。これを罪刑法定主義といいます。市民の行動の自由を確保するための、重要な原則です。
 このように刑法には、してはならない行為を事前に明示するという機能が求められ、それが解釈に反映されます。範囲が明確に伝わらなければなりませんから、条文に使われていることばは、その通常の意味に従って厳格に解釈されます。拡大解釈や類推解釈は許されません。構成要件、違法性、責任という判断枠組みにしたがって、ことばを精緻な積み木のように組み立てて解釈していきます。これが刑法の解釈の特徴です。論理が好きな人ならば、とても興味深く学べるはずです。



結論から始まる・民法 
 この見出しには民法の先生から異議が出るかもしれません。民法だって論理的に解釈するぞ、と。でも他の法律と比較すると、条文からではなく結論から解釈が始まる点が民法分野の特徴です。
民法の、利息に関する規定の特別法である利息制限法(高利貸が高い利息を取るのを制限する法律です)の解釈で、有名な話があります。その1条2項には、制限を超える高い利息でも払ってしまえば返還請求できない、と書いてありました。この通りだと結論が望ましくないということで、裁判所は、制限を超える高い利息は払ったあとで取り返せる、つまり過払い金は返還請求できる、という判決を出しました。条文の通常の意味と正反対の解釈です。この判決が定着して、数十年その解釈が続いたのちに、法律がそれに沿って改正されました(2010年、利息制限法1条2項を削除)。
 こう書くと、民法分野の解釈はでたらめに見えるかもしれませんが、そうではありません。民法分野の解釈では、よい結論であることが最も重要で、後から、その結論に合わせた理由付けが論理的に構築されるのです。そして、何がよい結論であるかは直感的に決まるのではなく、利益衡量という検討を経て決められます。この判断が解釈の一部を構成するので、社会経験の少ない学生には難しい部分があります。逆にいうと、多方面に配慮して何がよい結論であるかを考えるという、バランスのとれた判断力を磨きたい人にとっては、学びがいのある分野です。


         
法は後からついてくる・商法 
 商法分野には、商法、会社法、手形法、小切手法、保険法をはじめ、たくさんの法律があります。この分野は変化が速い経済社会を対象とするので、法が変化を追いかけます。たとえば、支払いには様々なカードや電子データが使われますが、これに関する法律は断片的です。支払いに関する法律である手形法や小切手法は、これにはまったく対応していません。実態の変化に法律が追いつかない分野であり、後追いで法律を作ったり改正したりしてきました。
このような商法分野の解釈の特徴は、機能重視です。こうすればこうなる、という要件・効果の関係に着目して、分かりやすい解釈を展開していきます(ただし会社法は、機能重視が行き過ぎて、逆にわかりにくくなったといわれることもあります)。原理原則にこだわった難しい解釈は歓迎されません。ダメなら法律を作ればよい、変えればよい、という発想をします。そのため、新しい法律がしばしば作られ、頻繁に改正が行われます。ビジネスの実務に興味のある人や立法論に関心がある人にとっては面白い分野です。

                                       

このように、基本法でも種類によって解釈の基本スタンスが相当異なります。このことを意識して学ぶとさらに興味深いものとなるはずです。

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桜井先生、ありがとうございました!

いかかでしたか。
日本の政治の今後が気になる⇒よし、来年度は加藤先生の「憲法」を履修しよう!なんていかがでしょうか。

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ではまた次回!
(次回はゼミ研究報告会「懇親会」編!)
※早くしてください、の学生の皆さんすみません