2014年3月12日水曜日

やがてなりたき男一匹 ~東京経済大学の長い歴史が遺してきたもの~

創設者 大倉喜八郎90才
南アルプス赤石岳に登頂

 
「適材を適所に置て法権を 強く守るは国の礎(いしずえ)」


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とある日の午後、


大学のとある場所で、古い貴重な資料が並べられていました。

左から、理事長、財務担当理事、前学長、史料室永山さん

「うむうむ、素晴らしいですな」
そんな会話が聞こえてきそうです。

並んでいた資料を少しご紹介。
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まずは書。
向かって右が大倉さんの書。
ちなみに左は石黒忠悳、真ん中は渋沢栄一の書です。


大倉さんの書その2

 大倉喜八郎の書体は、線の太い細いがはっきりしていて、はね、はらいが大胆、そして、独特なくねくねした筆づかいが特徴です。近代書史(石川九楊)の解説によると、江戸時代の3筆の一人、本阿弥光悦の字体に似ているそうで、実際大倉集古館(大倉さんが集めた貴重なコレクションの数々を所蔵している場所)には光悦の書巻があるそうです。

【外部ホームページへ】大倉集古館

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大倉喜八郎の自己啓発本 『自己発奮「急がず働け」』

大倉さんの本はほとんどが口述書だそうです。こちらもそうです。しかし、この本は誤植が多いので復刻されなかったのではないかとのこと。なので国会図書館にもないそうです。(元図書館員の坂本さんが古本屋で探してきたとのこと、すごい!)
大正4(1915)年発行

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まだまだあります。
大倉さんは狂歌の歌人としても有名です。

18歳で新潟の新発田から江戸に出てきました。
鰹節屋さんで奉公の後、21歳で念願の自分のお店を始めました。
それは乾物屋さんなのですが、開店したときに読んだ歌が今回のタイトルにした

「けふよりは おぼこもじゃこのととまじり やがてなりたき 男一匹」

という歌です。弱冠21歳ですよ!
若き大倉喜八郎の大望があふれていますね。




他にも大倉さんは歴史上の有名人物と関わりがあります。トーマス・エジソン、孫文、アインシュタイン、アムンゼン・・・東京経済大学を創設した大倉喜八郎ってすごい人なんですよ。

せっかく東経大に入学したのですから、是非、
大倉喜八郎ってどんな人?
なんで大倉さんは東経大を作ったの?
90歳でどうやって南アルプスの赤石岳に登ったの?

そんなことも調べてみてはどうでしょうか。

【東経大ホームページへ】 TKU MUSEUM

【東経大ホームページへ】東京経済大学概要

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続きます。
「広告研究」、これは「広告研究会」が発行していた冊子です。
第1号が昭和5(1930)年発行です。大倉さんが亡くなったのは昭和3(1928)年なので、大倉さんは残念ながらこの存在は知りませんね。

広告研究会が発行していた冊子「広告研究」の第一号
(昭和5年2月発行)
今も学生団体に「広告研究会」はありますが、昔の広告研究会と同じなのでしょうか。学生だけの団体だったのか、教員も入っていたのか、組織のあり方は不明とのことです。中を開いてみると当時の部員の写真がありました。
大倉高商広告研究会 メンバー
研究内容はこんな感じです。
<論説>
 廣告研究の種々相 大阪商科大学教授 村本福松
 商業美術の動向 日本広告学会 同人 田附與一郎
 廣告代理業を語る 株式会社 萬年社考案部 小川隆夫
 3つの重要問題、廣告合理化の基底として 大倉高商廣告研究会講師 粟屋義純
<研究>
 商業美術的要素に就いて  商業美術家協会 稲垣 知雄
 リズィンスキー氏の所謂「廣告豫算」に関する一項 大倉高等商業学校教授 塚本文治
<資料>
 ハーヴァード廣告賞に関する2,3の紹介 大倉高商広告研究会 山形彌之助
 廣告参考文献目録 ハーヴァード大学商学部廣告科教授 エヌ・エッチ・ボーデン


カラーの資料がありました。こちらも広告研究会作成です。

国有鉄道広告商品種類収入表


3大都市市電電車中央懸欄広告料金


学生が作った冊子等は「もっとあるはず」にもかかわらずあまり保管されていないとのこと。部室の片隅に歴史的資料があるかもしれません、何かあったら是非史料室へ!!


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続いて企業史




 知っている企業ばかりだと思いますが、どれも大倉喜八郎が創設に関わっている会社です。もっともっとあるそうです。

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なぜこのような資料が並べられていたかということを説明しましょう。

現在東経大ではキャンパス整備事業が進行中で、この春から、新図書館が完成します。
【東経大ホームページへ】キャンパス整備進行中!

それに伴い、古い図書館(現図書館)に、新たに史料展示室が誕生します。上の写真は、どの資料を並べるかを検討している風景でした。今回紹介したのはほんの一部です。この秋から、みなさんも見ることができるようになります。楽しみにしていてください!
また、大倉さんの銅像が建つ予定です。10月18日をお楽しみに。
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現代法学ブログなので、ちょっと法学っぽい話題をひとつ。

明治時代の法律家に、原嘉道(はらよしみち)先生と言う人がいます。
【ウィキペディアへ】原 嘉道
原先生は、田中義一内閣の<司法大臣>として入閣しました。その時に、大倉喜八郎がお祝いに贈った歌が、カッコイイんですよー。

「適材を適所に置て法権を  強く守るは国の礎(いしずえ)」

原先生と大倉喜八郎の関係ですが、原先生は大倉喜八郎が経営していた「大倉組」の顧問弁護士でした。

なんて、知ったかぶって書きましたが、昨日、前学長村上勝彦先生に、
「大倉さんってなにか法律と関係しませんか」
と聞いたら教えてくれました。私も勉強しなくては!


村上先生ありがとうございました!
(向かって一番右)

それではまた次回!