2016年3月22日火曜日

【学問のミカタ】「卒業」に寄せて-

皆さん、こんにちは。
いよいよ明日は卒業式ですね。学内の桜も少し開花し始めました。


3/22 桜、咲いてます

さて、今回の「学問のミカタ」共通テーマは【卒業】です


このテーマで、現代法学部、金崎剛志先生が、いわゆる「君が代日の丸訴訟」に関して、行政法的論点からアプローチしてくださいました。ではどうぞ!


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卒業式

金崎剛志

 
1)行政法から見た卒業式

 3月は卒業式のシーズンである。卒業式をテーマにして記事を書こうとして真っ先に思い当たった題材は、いわゆる君が代日の丸訴訟である。これはどういう事件か簡単に説明しておこう。小中高等学校では、入学式や卒業式といった式典において、国旗(日の丸)を掲揚し国歌(君が代)を斉唱することになっている。国歌を斉唱する際には、ピアノの伴奏が必要になる。ピアノの伴奏は誰がやるのかというと、その学校の音楽の教諭がやることになる。

 そこで、その音楽の教諭が、自らの思想信条に基づいて、国歌の伴奏をしたくないとして伴奏を拒むという事件がいくつかの学校で起きたのである。最高裁まで上がってきた事件として、最高裁判決平成2429日判例時報215224頁がある。国歌の伴奏を音楽の教諭に命ずることが良いのか悪いのかという憲法的な論議や政治的な論議は多く存在する。ここでは、そういった憲法や政治に関わる論点は一切度外視して、専ら行政法的な論点のみを扱う。したがって、政治的主張を展開する意図は全く無いことをあらかじめ断っておく。論点は、昨年の8月にこのブログで扱った、行政立法の話である。

 

2)卒業式と行政立法

 君が代日の丸訴訟の前提として、学校の式典においては国旗を掲揚し国歌を斉唱することになっていることを述べた。行政法的に問題となるのは、「国旗掲揚と国歌斉唱の法的な根拠は何なのか」、ということである。物事には必ず根拠があるはずなので、根拠は何かということを考えることから出発しなければならない。

 学校における教育のあり方を定める法律として、学校教育法がある。学校教育法は、幼稚園から大学まで、あらゆる学校について定める法律であるが、話を単純化するために、高等学校に限定して法律を紹介する。学校教育法52条では、「高等学校の学科及び教育課程に関する事項は、前2条の規定及び第62条において読み替えて準用する第30条第2項の規定に従い、文部科学大臣が定める」と定める。間の部分はとりあえず省略して、ここで重要なのは、「文部科学大臣が定める」という部分である。法律の委任である。これを受けて、学校教育法施行規則が定められている。

 学校教育法施行規則は、文部科学省の省令である。したがって、国会が定めたものではないから法律ではない。また、法律の根拠なしに省庁が勝手に定めたものではなく、法律の委任にもとづいて定められたものだから、行政立法のうちの法規命令に該当するものである。学校教育法施行規則84条には、「高等学校の教育課程については、この章に定めるもののほか、教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する高等学校学習指導要領によるものとする」と定められている。学校教育法から委任を受けた学校教育法施行規則は、高等学校学習指導要領に再委任しているのである。

 高等学校学習指導要領では、第5章第3で「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と定められている。実は、学校教育法にも学校教育法施行規則にも国旗や国歌という言葉は出てこなかった。高等学校学習指導要領の中にこのようなことが定められているのである。

 

3)学習指導要領の法的性格

 学校の式典で行われている国旗掲揚と国歌斉唱が、学校教育法に直接の根拠を持っているのではなく、高等学校学習指導要領に基づくものであることが明らかになった。では、次に気になるのは、学習指導要領なる文書は法的にどのような性格を持っているのかということである。学習指導要領が法規命令であれば一般国民に拘束力を持つことになり、通達であれば一般国民に拘束力を持たないということになる。

 日の丸君が代訴訟とは全く異なる事案であるが、最高裁判所の判例(最高裁判決平成2118日民集4411頁)は、高等学校の教諭の「学校教育法の規定学習指導要領の定め等に明白に違反する」行為に対する懲戒処分を適法としている。教諭が学習指導要領を守るべき義務を有し、その義務の違反を理由にして懲戒処分を行うことができるということを前提にしているから、最高裁は、学習指導要領に法的拘束力があると考えているのだろう。また、地方公共団体のウェブサイト上でも、学習指導要領は国民の権利義務に関する法規としての性格を持つという記述がある(https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kyouiku/02zesei-sankou-seikaku-se-kaku.html(広島県教育委員会))。

 実は、学説上は学習指導要領が法的拘束力を持つかということに関して昔から論争がある。しかし少なくとも実務上は、法的拘束力を持つ法規として扱われているのである。その根拠は、学校教育法52条と学校教育法施行規則82条にある。


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金崎剛志先生ありがとうございました!

ではまた次回!