2014年1月16日木曜日

こんな時代だから法律を学ぼう その① 『市民のための契約法講座』 開催中

2014.1.14 第1回 市民のための契約法講座

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①高齢消費者トラブルが6年連続で増加 相談全体の3割にまで
②「健康食品の送りつけ商法」が激増 昨年同時期の約10倍
③依然として多い投資トラブル 広がる劇場型勧誘(買え買え詐欺)
④ホテルや百貨店でのメニュー表示問題が相次ぐ
⑤薬用化粧品による白斑トラブルが発生
⑥トラブルの国際化 海外インターネット通販が急増
⑦ネットサイト関連の相談が上位を占める アダルトサイトは老若男女問わず
⑧「偽装質屋」が登場 サラ金の相談は6年連続で減少
⑨進む消費者関連法の整備 「地域体制の在り方」の検討もスタート
⑩国民生活センターの存続決定 独立行政法人「中期目標管理法人」が示される
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上の10項目は何だと思いますか?

これは、国民生活センターが毎年公表している「消費者問題に関する10大項目」です。
みなさんも「どこかで聞いたことがある」と思う話題が多いと思います。国民生活センターでは毎年消費者問題として社会的注目を集めたものや消費生活相談が多く寄せられたものなどからその年の「消費者問題に関する10大項目」を選定し公表しています。見てみると、ほとんどが「契約トラブル」であることが分かります。①、②、③、⑥、⑦、⑧あたりがそうですね。④は表示の問題、⑤は安全性の問題、⑨⑩は制度の問題です。(追記:どれも法学部で学べますよ)

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また、最近の消費者法の話題として、この年末に消費者を保護するための重要な法律が成立しました。この年末といえば「特定秘密保護法案」の話題で持ちきりでしたね、これに隠れてこちらはあまり報道されませんでしたが消費者法では画期的な法律の成立です。
 
それは「消費者裁判手続き特例法」といいます。
 
「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」というのが正式な名称です、長いです。
 
 簡単に言うと、今まで「一人じゃ裁判を起こしにくかった」小額な消費者トラブルを、同じ被害に遭った人をまとめて解決しようという法律です。消費者トラブルというのは、1件当たりの被害は小さいことが多いです。今までは「仕方ない」で終わっていた、わざわざ訴訟を起こすほうがコストがかかってしまう被害でも、同じ被害に遭っている人がまとまればすごい額になります。消費者が「泣き寝入り」しなくて済むための法律がここに成立しました。今後3年以内に施行されます。
 
もう少し説明すると、裁判手続きは2段階制になっていて、第一段階では、政府が認定した特定適格消費者団体が提訴し、勝訴した場合、第二段階で被害を受けた人がそれに参加し、その後、被害者への損害賠償額が決定します。
 
この法律は「日本版クラスアクション」と言われていて、当初企業は相当警戒していましたが、「あくまでも、法律を守らない悪い企業は利益をはきだしなさい」というのが日本版の狙いです。とはいえ、法律を読むと一般の企業も安穏とはしていられない内容です。

もっとも今回成立した法律は、被害救済という点からみると十分ではありません。
 
たとえば、今回の内容には「拡大損害」は含まれませんでした。「拡大損害が含まれない」というのはどういうことかというと、たとえば、買った不具合パソコンについては、企業は賠償しなければならないけれども、それによって家が火事になった場合、その被害については企業側は賠償責任がないということです。「えー!でも火事になったのはパソコンのせいじゃん!!」という声が聞こえてきそうですが、今回は含まれませんでした。それでもこの法律が成立したことは第1歩なのです。
 
「消費者裁判手続き特例法」についてもっと知りたい人は、島田 和夫先生、桜井 健夫先生、村本 武志先生、村 千鶴子先生を訪ねてください。


ちなみに上記内容はこれから話題にする国分寺市との共催講座(第1回入門講座)で島田和夫教授が話された内容の一部に基づいています。
 
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消費者法は、1990年代以降急速に法整備が進みました。
私たちはだれもが「消費者」です。たいていの人は毎日何かを消費していると思います。例えば「ものを買う」ということでも、昔は近所の八百屋に行って、大根を商店のおばさんに差し出して100円払うという行為だったことが、今では、クレジットカードで買うことができます。また、インターネットのスーパーで買えば、売ってくれている人の顔も分かりませんし、直接的なお金のやり取りも不要です。大根を手に入れるだけでもいろいろな方法があります。新しい方法ができれば新しいルールが必要になります。ルールがなかったり、ルールを知らないと、上記のような10大ニュースが発生するわけです。さらに言えば、契約ルールは学習しなければ分かりません。
 
「現代社会」は「法化社会」と言われていますが、これからはすべての社会人が法的知識が必要な世の中になっていきます。知識や情報量の格差によって受ける被害が甚大なものになります。
 
そんな中、2012年に「消費者教育推進法」が制定されました。国や自治体が、幼時から高齢者までの全世代に対し消費者教育を行う責務があることが明確化されました。また、同年全国の中学校で法・契約教育が導入されることになりました。これから大人になる子どもたちは、必ずどこかで法・契約者教育を受けています。
 
「では既に大人である私たちには、誰が教えてくれるの?」
 
というと、自分でそういう機会を探し参加しなければなりません。現代法学部に入学したみなさんは、せっかく入学したのですから、消費者法の授業を受けて学んで、周りの人にも教えてあげられるような賢い消費者になってください。
 
また、東京経済大学では、昨年に続いて、国分寺市と共催で、東京都消費生活総合センターの後援を受け「市民のための契約法講座」を実施しています。現代法学部教員が講師を務めます。
 
1月14日(火)に第1回目の講座が既に開催されてしまいましたが、今後も2月18日まで4回にわたって毎週火曜に開催されます。次回は今話題の「NISA(少額投資非課税制度)」です。現法さんも母親から投資について聞かれることがありますが、聞いていると「こんな知識で投資してて大丈夫なの、老後の資金」と心配になることがあります。「証券会社に勧められたから買った」という、同じような状況の年配の方は多いのではないかと思います。まだ席に余裕がありますので、興味のある方がいらっしゃいましたら国分寺市にお問い合わせください。学生のみなさんの参加も可能です。参加費は無料です。
 
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◆入門講座(身近な事例で学ぶ入門講座)
第1回 契約社会に生きる ~買い物は契約、契約にはルールがある~ 島田和夫【済】
第2回 投資被害にあわないために ~NISA(少額投資非課税制度)開始で要注意~ 桜井健夫
第3回 消費者はどのようにしてだまされるのか ~だまされる消費者が悪いのか~ 村本武志
◆契約法の入門の入門
第4回 契約ルールの基礎知識① ~民法の契約ルール~ 村 千鶴子
第5回 契約ルールの基礎知識② ~消費者契約の特別ルール、クーリング・オフ~ 村 千鶴子
 
 
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