2018年1月31日水曜日

【学問のミカタ】「犯罪」のイメージ ~平成29年度版犯罪白書より~

2018.1.22 大雪の日

みなさんこんにちは。

第2期の定期試験も無事に終わり、いよいよ春休みですね。
あっ…無事に…ではなかったか。

【外部ホームページへ】1月22日の関東の雪「典型的な南岸低気圧」低気圧の急発達と下層の冷気で大雪に(ウェザーニュース)

1月22日(月)のお昼頃から雪が降り始め、帰る頃には吹雪いていました。翌23日の定期試験初日は、交通機関への影響を考慮して試験開始を1時限分遅らせることになりました。


しかし学生の皆さんは元気で…


自分と同じ大きさの雪だるま作成中。いつから作っているのか聞いたところ「まだ30分位ですよ」とのこと。こんなに大きな雪だるまが作れるほどの雪は、東京ではそう降らないですもんね。帰る学生も皆で雪を投げあいながら帰っていました。



予報によるとまた今週も雪のマークが。恐いですね。皆さん気をつけましょう。
【外部ホームページへ】週後半の雪予想 降雪あり・なしで見解分かれる(ウェザーニュース)

東京の低温も珍しいですが、今日は更に珍しい天体ショーもあるようですね。
【外部ホームページへ】今夜は皆既月食 ハワイからの中継も(ウェザーニュース)


--------------------------------------

さて、今日は【学問のミカタ】。中村 悠人先生(刑法)が寄稿してくれました。

日々の事件・事故はニュースで知りますが、刑務所に入って服役している人がどのくらいいるのか、どんな罪が多いのか、なんて考えたこともありませんでした。今回中村先生はそのデータを示し説明してくださいました。

ではどうぞ~。


【学問のミカタ1月】


--------------------------------------
2017.12.20ゼミ研究報告会で質問する中村先生


「犯罪者」と聞くとどのようなイメージをもつだろうか。

凶悪な人間、歪んだ性格の人、常に人を陥れたり傷つけたりする人、そういうイメージであろうか。このブログを読んでいる方のなかには、「私は犯罪者になんかあったことないけど、きっと怖い人なんだろう。」と思った人もいるかもしれない。しかし、ちょっと考えてみると、このようなイメージは揺らいでくる。「犯罪者」というからには犯罪をした人だが、犯罪といえど多様なものがある。前述のイメージに合いそうなものでは、殺人罪や強盗罪、放火罪、強制性交等罪、あるいは詐欺罪等々であろうか。

もっとも、殺人といえども無差別や快楽での殺人もあれば、DVや虐待の末に耐えかねての殺人も、介護疲れによる殺人もあるだろう。詐欺といっても、振り込め詐欺の計画立案をして行ったものもいれば、割のいいアルバイト感覚で受け子(現金等の財物を受け取る役。学生がこの受け子をやる例も。)をする人もいるだろう。さらに、犯罪には、運転免許証を携帯しないで運転する罪や最高速度をこえる速度で車両を運転する罪、自動車等を運転中に携帯電話等で通話をする罪などもある。また、公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した罪や虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た罪のようなものもある。このような犯罪を行った人は、冒頭のイメージに合うだろうか。


ここで、刑務所にいく「犯罪者」は先のイメージ通りだろう、と考える人がいるかもしれない。実際に刑務所に収容される人(受刑者)は、どんな人であろうか。『平成29年版 犯罪白書』によると、平成28年末で受刑者は49,697人で、平成28年の入所受刑者は20,467人で戦後最少となっている。この入所受刑者のうち男女比は、男性18,462人、女性2,005人である。年齢層別構成比で見ると、


20歳未満
20~29
30~39
40~49
5064
65歳以上
男性
0.2%
14.3%
23.2%
27.1%
23.7%
11.6%
女性
0.1%
10.0%
21.2%
29.8%
20.8%
18.1%

となっている。

もう少し掘り下げてみよう。まず、年齢層に関しては、65歳以上の入所受刑者数が増えている。単純に10年前と20年前で比較してみると、受刑者の高齢化が見えてくる。

男性60~69
6569歳)
男性70歳以上
女性6069
65~69歳)
女性70歳以上
平成8
1165
333人)
150
62
22人)
12
平成18
2710
998人)
707
211
88人)
89
平成28
2307
1164人)
971
246
137人)
226

高齢の受刑者のなかには認知症が疑われる者もいて、来年度から8つの刑務所で受刑者に認知症検査を行う方針を法務省が発表している。高齢の受刑者には、介護が必要な者も多く、刑事施設で所定の作業を行わせるという内容の懲役刑を行うことが難しい状況の受刑者もいる。刑務所であれば衣食住が保障され、医療も受けられるとして、彼・彼女らにとっては刑務所が生きていくためのセーフティネットとして機能している側面もある。

---------------

 次に、罪名別でみてみよう。一番割合が高いのが窃盗罪(男性32.1%/女性45.4%)で、次に覚せい剤取締法違反の各種犯罪(男性26.2%/女性36.8%)、そして詐欺罪(男性10.2%/女性5.0%)、道路交通法違反の罪(男性4.9%/女性2.0%)と続いている。



窃盗
覚せい剤取締法
詐欺
道交法
全体
6837
33.4%
5580
27.3%
1980
9.7%
950
4.6%
男性
5926
32.1%
4842
26.2%
1880
10.2%
909
4.9%
女性
911
45.4%
738
36.8%
100
5.0%
41
2.0%

窃盗罪と覚せい剤取締法違反の各種犯罪で、半数以上が占められている(女性については8割を超える。)。その一方で、殺人や強盗、強制性交等(強姦)、放火については(それぞれ未遂等含む)、割合としては高くない。



殺人
強盗
強姦(強制性交等)
放火
全体
218
1.1%
414
2.0%
260
1.4%
154
0.8%
男性
180
1.0%)
406
2.2%
260
1.4%
134
0.7%
女性
38
1.9%
8
0.4%
20
1.0%

このように見てくると、皆さんのなかでも、冒頭のような「犯罪者」のイメージから少し変わってきたかもしれない。少なくとも、自分のイメージだけで考えては、見当違いなことになりかねないと思ってもらえたら幸いである。

今回は、ごく一部(のさわり)だけを扱った(詳しくは講義でも扱っていく)。興味を持った方は、一緒に学んでいきましょう。

-----------------------------------------
中村先生ありがとうございました。
いかがでしたか?
 興味を持った学生のみなさんは、来年度は中村先生の「刑法a/b」を履修してくださいね。ちなみに火曜2限です。

ではまた次回!