2017年7月14日金曜日

【学問のミカタ】ー法学と「時代の遠近感」ー

2017.7.14 「公共政策論」ゲスト講師
坂本義次・東京都檜原村村長(本学OB)

 みなさんこんにちは。

 毎日暑い日が続きますね。体調は崩していませんか?

 いよいよ来週で第1期の授業が終わり、再来週からテスト期間に突入です。TKUポータルには、既に【試験時間割】ボタンが表示されています。自分の試験科目や試験日を今一度確認しておきましょうね。

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桧原村ゆるキャラ「ひのじゃがくん」ポスト 可愛い!

 更にTKUポータルには、
 今日の授業「公共政策論(藤原修教授)」に桧原村の坂本村長をゲスト講師としてお迎えし、お話いただくことが決定したので、授業を履修していない学生も聴講希望者は聞きに来てもいいですよ。

 と載せました。数名の学生から聴講希望が寄せられました。現代法学部の学生は、就職の選択肢の一つとして公務員を挙げている学生が多くいます。


2017.7.14 坂本義次桧原村村長による授業
 坂本村長は「過疎地の自治体の経営について」というテーマで、「村(過疎地域)」の問題点、桧原村の取り組みや今後の展望をお話くださいました。坂本村長が「この中で村出身の人は居ますか?」と学生の皆さんに質問されましたが、村出身は一人だけでしたね。あまり身近ではないからか、学生の皆さんは初めて聞くことが多く、それに対する桧原村の取り組みを聞いて、改めて地方自治の重要性を理解できた、と多くの感想がありました。


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 この話はまた、「公務員志望者支援プログラム(TKU/POP)」の近況とともにブログにアップします。来週はTKU/POP生ミーティングがあります。先月は、50年ぶりに改正された「行政不服審査法」について金崎先生のミニ講義を行いました。
 来週は何をするか、それはお楽しみに。



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 さて、今日は【学問のミカタ】です。今回の担当は久保健助先生。タイトルは「法学と時代の遠近感」です。では先生よろしくお願いします。

 -------------【過去のブログ記事へ】------------
 私たちのゼミ合宿を紹介します!~久保ゼミin箱根湯本での1泊2日~
現代法学部教員がおススメする、夏休み見学スポットや本
 【学問のミカタ】「スポーツが好きだから、現代法学部」だって、いいじゃない!
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*各学部・センターの「学問のミカタ」については以下。

【学問のミカタ7月】

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2017.4.1 学部オリエンテーションで説明する
久保先生(教務主任)

法学と「時代の遠近感」
 

 あなたのお父さんは、何年生まれですか?

 「昭和○○年生まれです」とか「19○○年だったかな」と答えてくれるのを期待して、学生に聞くのです。それをうけて「ああそれなら君のお父さんが高校時代には、スマホもネットも使っていなかった時代だね」とやり、「今日扱う判決は、それよりも更に古い時代に出されたものです」と授業の本題に入ってゆこうという心づもりです。

 ほとんどの法律は、多かれ少なかれ時代を反映して作られています。その法律を適用して出される裁判所の判決もまた、同様に時代や社会の変化を反映している面があります。ですから、法律や判決について勉強する際には常に、それらがどのような時代背景を持っているのかについて意識することが大切です。この判決で争われた事件が起こった時代には、スマホもネットもなかったのか、現在とは大分違った日常だったろうな、と。そのような感覚を持ってもらいたいのです。

 ところが最近、上記のような授業運びの目論見はしばしば挫折します。
 学生Xが「??」と答えに窮するのです。「え、お父さんの生まれた年、分からない?大体でいいんだよ」と助け船を出しても、学生Xは「はあ」と首をひねっている。しかも、このXだけが、家族のことに特別に無頓着なわけでもないようです。YさんやZ君に聞いても似たような場合が多いのです。

 何が原因なんでしょうか。おそらく私(1961年生)の世代で両親の生年月日を知らない人はほとんどいなかったのではないかと思います。

 家族関係の希薄化?いや、これは専門外なので分かりませんが…。ただ、学生の話を聞いてみますと、どうやら「役に立つ年号は覚える」ということのようです。つまり、テストの点数にかかわるような場合には、「大化の改新」や「鉄砲伝来」の年号も記憶します、というわけです。なるほど、自分の親父が歴史上の偉人でもないかぎり、その生まれた年を覚えても、試験問題に出るはずもありません。その意味では「役に立たない知識」に分類されているのかも知れません。

 しかし、そうとばかりは言えません。《親父が生まれた頃(例えば1970年代前後)にはまだ「学生運動」というのが相当盛んだったらしい》とか《「農地改革」(194050年代)はうちのおじいさんがまだ子供だったころの(したがって相当に古い)話だな》とかいう「時代感覚」あるいは「時代の遠近感」を持つことは、大いに有益です。何が有益かと言えば、無機的な単なる暗記とは異なり、ある種の実感を伴ってその時代を記憶することが出来るからです。

 法をめぐる諸問題、とりわけ私が専門にしている憲法をめぐる議論においては、その問題の社会的・時代的背景が、重要な意味を持ちます。

 たとえば…。

 201512月に最高裁判所が一つの違憲判決を下しました。いわゆる「再婚禁止期間違憲判決」です。離婚したのちの再婚を、女子だけに6ヶ月間禁じていた民法733条の規定が憲法14条に反する、とされたのです(現在は法改正され、100日間に短縮されています)。この条文が作られたのは明治31。すなわち1898年のことでした。違憲判決から120年近く前ということになります。その間少なくとも二度、この条文の合憲性について議論されたことがあります。一度は、明治憲法から現憲法に切り替わる際(1947年)であり、二度目は、1995年の最高裁判決においてです。しかし、いずれの機会においても同規定は、違憲とはされませんでした。

 つまり、議会が最初から憲法に適合するかどうか疑わしい法律を制定して、それに対して最高裁判所が違憲判断をしたという話ではないのです。判決には次のように述べられています。旧民法起草当時、この規定が不合理であったとはいい難いが、「医療や科学技術が発達した今日においては、…[これを]正当化することは困難になったといわざるを得ない」。長年にわたって違憲とはされず、適用され続けてきた規定が、時代の推移によって違憲と判断されたわけです。同様の例は少なくありません。

 このように、時代の推移(科学技術の変化のみならず、社会状況、国際情勢や国民の意識の変化も含めて)によって、法の解釈に変化が生じてくることがあるのです。これは決して「わるいこと」でも「本当はしてはいけないこと」でもありません。なぜなら、法は人々がよりよい社会生活を送るために用いる道具の一つに他ならないからです。むしろ、時代の推移を考慮せずに旧来の法解釈に固執することが、人々のよりよい社会生活、わけても人の生命・自由・財産を危うくするような場合さえあり得ます。

 何世代も前に作られた法の条文や何十年も前に出された判決の解釈を機械的に暗記して、これが「正解」だと満足して居るわけにはいきません。ある判決に示された条文の解釈は、現状でもなお、妥当なものと言えるだろうか。あるいは、解釈の範囲を超えて、もはやこの条文は改正を要するのではないか。常にそうした時代や社会の変化・推移を意識して課題に取り組んでゆくことが非常に重要だということです。

  時代の変化・推移を意識して、課題に取り組む。その手始めに、このブログ記事を読み終わったら、ご両親に生年月日を確かめてみたらどうでしょう。そして、スマホがなかった時代、どうやって友達と連絡を取り合っていたのか?バブルの時代に何か美味しい思いをした経験はあったのか?そんなことも聞いてみたらどうですか。現在とは異なる時代状況を感じることが出来るでしょうし、家族関係の濃密化にも多少は役立つかも知れません。


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久保先生、ありがとうございました!

いかがでしたか?

法は、作られたときのままで使うのではなく、時代背景やそのときの技術進歩に合わせて変えていかないと、矛盾が生じるただの難しい文章になってしまう、そんなところでしょうか。「行政不服審査法」も使いやすさや公正性の向上のために改正されましたね。しかし、法律も条文もたくさんあるので、時代に合わせる作業は大変そうですねぇ。。。

 自分のお父さんお母さんだけではなく、おじいちゃんおばあちゃんにも「生まれた年」を聞いてみて、そのときに作られた法律はあるのか、そのときの時代背景、またその後改正されたのか、調べても面白いかもしれません。

 しかし現法さんの親はいつ年齢を聞いても実際の年齢より若く言っていたので、こんな親御さんもいるかもしれませんね。現法さんも永遠の25歳でいたいものです。あ、言い過ぎたか。

ではまた次回!