2017年3月29日水曜日

【学問のミカタ】SNSは社会の窓 
~学生の皆さんに気をつけてほしいこと~

ハンブルク市の市庁舎(Rathaus)

 皆さんこんにちは。

 先週の卒業式に少ーしだけ咲いていた桜も、ここ数日の寒さのせいか、なかなか開花が進まず。
 今週末土曜日の『入学式』には素敵な桜並木になっているといいですね。

 在学生の皆さん、いよいよ明日から【第1次履修登録期間】が開始します。いよいよ2017年度が始動します。準備はいいですか?

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 さて、今日は【学問のミカタ】。テーマは【SNS】。
 学生の皆さんに聞くとFacebookよりTwitterを使っていると言います。たまに質問に来た学生が「皆に連絡しておきます」なんて言う時はたいていSNSを使って連絡してくれているみたいです。みんな親切で優しいなぁと思う反面、でもお願い、絶対間違えないでね!とも思うのです。皆を信頼していますのでよろしくです!

 今回は永下泰之先生が記事を寄稿してくださいました。
 永下先生は3月はドイツのハンブルクにある研究所で研究をされていたので、上記の写真はハンブルクの市役所の写真です。

 あ、永下先生からのコメントです。
 ※ハンブルク(ドイツ)に出張に行ってまいりました。ハンブルク市の市庁舎(Rathaus)です。ただし、本稿の内容とは一切関係がありません。

 永下先生らしい!ではどうぞ~


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SNSは社会の窓

永下 泰之

3月のテーマは、SNSです。
Social Networking Service、略して「SNS」と称されます。SNSには、TwitterFacebookLINEYou Tubeなど様々なものがあります。これらは、インターネットに接続することのできる環境であれば、友人のみならず世界中の人たちとコミュニケーションをとることができ、また様々な情報を収集することができることから、非常に高い利便性を有しています。そして、そのような特性があるからこそ、使い方次第では高い危険性を有しています。


本学にも、SNSの利用に関する注意喚起として、以下のガイドラインを公表しています。本学学生の方は、下記ガイドラインをまずは一読することをおすすめします。


ここでは、上記ガイドラインを踏まえた上で、筆者として若干の法律上の注意点を述べてみたいと思います。

1.名誉毀損の可能性
SNSはその特性として、気軽に投稿することができるということがあります。そのため、内容につき十分な検討をしないまま、他者を誹謗中傷するなどの名誉毀損となりうる投稿をしてしまった事例が多く見られるところです。とりわけ、投稿に字数制限が設けられているTwitterでよく見られる現象です。
そうした投稿が名誉毀損に該当するとなれば、民事責任、つまり損害賠償義務を生じさせますし、場合によっては刑事罰の対象ともなりうるものです。
では、そうした内容の投稿は削除してしまえば問題はないのか、といえば、そうとも言えないのが現状です。Twitterには「RT(リツイート)」という機能があり、投稿内容がフォロワーにより拡散されることがあります。そのため、先の名誉毀損となりうる投稿が拡散されてしまい、収集がつかなくなることがあります。リツイートされた投稿は、元となる投稿自体を削除すれば見られなくなるのではありますが、その投稿がコピペされてしまえば、どうしようもありません。また、名誉毀損の対象となった被害者からすると、元の投稿が削除されない限り、リツイートされた投稿はインターネットの世界では生き続けることになりますので、投稿主が削除に応じない場合には、被害は継続してしまいます。そのコピペがまたリツイートされたとなれば、情報の本来の出どころを確定すること自体が困難になります。
先にも述べたように、SNSの気軽に投稿できるという特性から、利用者は加害者にも被害者にも容易になりえますので注意してください。



2.いわゆる「パクツイ」問題
これもまたTwitterでよく生じるものですが、誰かの投稿内容をそのままコピペして投稿する行為は「パクツイ」と称されています。こうしたパクツイをする動機は様々なものがありますが、法的には、著作権侵害に問われる可能性があります。
著作権侵害が成立する場合には、損害賠償責任だけでなく刑事罰も科される可能性がありますので、注意してください。

3.情報の遺漏
まず注意すべきは、自己のプライバシー情報を発信しないということです。SNSは、投稿内容を簡単に拡散、複製することができますので、自己のプライバシーに関わる情報がそれこそ世界中に筒抜けになってしまいます。こうした情報を利用して犯罪行為を企図する者も少なくないのが現状です(例えば、投稿内容・時間などから、特定の曜日の特定の時間には部屋にいない、あるいはいることがわかってしまい、盗難被害や性的被害に遭うという事例が散見されます)。
プライバシーに関しては、他人のプライバシーに関わる情報を発信しないということも重要です。自分の場合でもそうですが、例えば友人との写真を投稿することで、その写真から様々な情報を得ることができます。自分に危害が及ばなくとも、友人などの他者に危害が及ぶ可能性が懸念されますので、親しい間柄であっても、プライバシーに関わる情報を無断で公表することはしないでください。
また、情報の遺漏で更に気をつけなければならないのは、「職務上知り得た情報」の遺漏です。つまり、守秘義務違反に問われる可能性です。大学生ともなると、多くの者がアルバイトなどをしていますが、その職場には、様々な種類の情報が集約されていることでしょう。よく見られるのが、アルバイト先に来た芸能人の情報を投稿するというものです。これは、その芸能人のプライバシーの侵害になりえます。また、アルバイトをしている職場には、その職場・企業にとって重要な企業秘密などがあるはずです。そうした企業秘密は、企業にとっての生命線に関わるものですので、これをSNSで公表したりすることは厳に謹んでください。バイト先をクビになった程度ならまだよいほうで、民事責任を追求される可能性もありえます。

4.いわゆる「デマ」の拡散
SNSの普及により、まさに世界中の人々が情報発信元となり、「一億総メディア化」などとも言われています。この現象については、従来光が当てられていなかった情報や隠されていた情報などが可視化されるという点で、非常に重要な役割を果たしているといえます。しかしながら、個人自体がメディアとなることには、一つ重大な問題点が挙げられます。いわゆる情報の「裏取り」がなされていないことが多いということです。
従来のメディアの主力を担っていた新聞やテレビ、ラジオなどは、情報を公表する前には(完全とは言えないまでも)記者などが取材をして情報の正確性を検証する作業を行っており、その意味では情報の確度は高かったといえます(もっとも、近時のテレビなどのワイドショー化などを見ると必ずしも情報の確度が高いとはいえなくなってきたのが残念です)。では、「一億総メディア化」の現状ではどうでしょうか。自分のこととして考えてみましょう。誰かから聞いただけの話を投稿していませんか?その情報の裏取りはしましたか?その情報は確実・正確であるという資料を提示することはできますか?個人にそこまでの労力を求めるのは酷かもしれませんが、SNSで発信された情報は、誰が発信したかに関わりなく「情報」として伝播してしまいます。そのため、SNS上で頻繁に生じるのが「デマ」の拡散です(Twitterはこうしたことから「デマッター」と称されることがあります)。
一つ事例を見てみましょう。


事案を簡単に説明しますと、ある大学の学生がTwitterに、大学教授が講義中に「阪神タイガースが優勝すれば無条件で単位を与える」旨の投稿を写真(パワーポイントスライドを用いて話している状況)を投稿したのですが、これが虚偽であるとされ、名誉毀損が成立するとして、慰謝料200万円の支払いが命じられています。虚偽の投稿(デマ)による名誉毀損の事例です。判決文や報道によると、当該学生は冗談だとわかると思っていたとか、軽い気持ちで投稿したようですが、現に民事責任を問われています。

デマの拡散には、様々な動機や理由などがありますが、SNSで問題となる場合は、たいてい情報の裏取りをしていなかった場合です(もちろん、情報錯乱のためにわざとデマを流す場合もあります)。単に友達から聞いたとか、テレビで言っていたということだけで、気軽に情報を投稿することは控えたほうがよいようです。先にも述べましたが、いとも簡単に自身が加害者となり、また数多くの被害者を生み出してしまいかねません。

5.その他
SNSで生じる諸トラブルについて、最後に若干触れておきたいと思います。

Facebookなどには字数制限がありませんが、Twitterは現在においては字数制限が存在します(日本語の場合140字)。Twitterに限りませんが、どうしても言葉足らずとなることがあります。そのため、投稿の真意がうまく伝わらないことがあります。そこから、思わぬ誤解をされたり、場合によっては、抗議を受けることがあります。ひどいものとなると、完全な誤読を生じます。日本語はかなり文脈に依存する言語ですので、当該投稿内容もまた本人はある一定の文脈にそって投稿している可能性があるのですが、見る人(とくにリツイートされた投稿を見る人)にはその文脈が共有されていない可能性が高く、真意を読み取れない、あるいは完全に誤解することが多く見られます。そのために、ひどく粘着され、精神的に疲弊してしまうケースも多く見られます。

次に、とくに学生に注意してもらいたい点を2点あげます。

第一は、SNSの投稿内容による学生としての身分が危うくなる点です。コンビニのガラスケースに入った写真を投稿して処分を受けたというニュースを記憶している人も多いのではないのでしょうか。本人はいたずらのつもりであっても、社会的に、そして大学として処分が科される可能性がありますので、そうした行為は厳に謹んでください。なお、筆者も似たようなケースを経験しております。ある学生(男性)が公園で全裸の写真を撮影し、これをTwitterに投稿したというケースです。投稿後30分から1時間後くらいには当該投稿を削除したようなのですが、投稿後即座に保存され、巡り巡って大学に通報があったことがあります。このようなことで学生としての身分を危うくすることのないよう注意してください。
第二点は、SNS上でのイジメ問題です。主にLINEで起こる問題ですが、SNS上で特定個人をそれとわかるように誹謗中傷したり、あるいは特定のグループから外すなどの行為が行われることがあります。そのため、いじめの被害にあった者が自殺したケースをよく耳にします。皆さんの周りにもそうしたケースはないでしょうか?大学生活においては、LINEなどで連絡を取り合っていることが多くあります。部活動やサークル、ゼミ活動、アルバイトなど様々なところで活用されているかと思います。それ自体は、非常に便利ではあるのですが、一歩間違うと、上記のような悲惨なケースが生じます。大学生にもなってまさかそんな幼稚なことはしないだろう、とは思っていますが、やはり起こりうる問題ですので、注意してください。

なお、もしそうした被害にあわれましたら、迷わず本学の学生支援をご利用ください。


若干とか言っておきながら長くなりました。まだまだSNSについては語るべき点は多いのですが、このあたりで一旦終わりとします。

覚えておいてほしいのは、冒頭に述べた点です。

SNSは社会の窓


なのです。SNSは「社会に通じる窓」です。学生にとっては世界を広げる機会ともなりますので、十分注意したうえで活用されることはむしろ推奨されると思います。しなしながら、もう一点にも気をつけてください。あなたもまたその「窓」から見られているということを。利用に際しては、その点を努々お忘れなく。

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永下先生ありがとうございました!
いかがでしたか。
SNSは【被害者】になってしまうことも、【加害者】になってしまうことも両方を考えた上で利用しなければなりませんね。学生の皆さん、本当によろしくお願いします。

ではまた次回~